川北英隆のブログ

政府関与と株式市場

本日、4/16の日経新聞の朝刊によると、政府はETFの購入に関する法案を固めたという。経済対策の一環としての株価下支えであるが、疑問点が多い。
ちなみに、ETFとは上場投資信託で、株価インデックスを模倣するように運用されている。ETF購入すれば、個々の上場企業の投資対象としての是非を判断しないですませられるから、個別銘柄を購入するよりもスマートである。「なぜ、こんな銘柄を買ったんだ」という批判も避けやすい。
疑問点の1つは、そもそも株式を買うことが政策になるのかという本質的なものである。この類の批判はよく見かけるので、ここでは多くを語らない。ただ、日本の株価が企業業績の現状から大きく乖離しているとは思えないこと、すでに株価は経済の先を見越して回復を始めていることを指摘しておきたい。
2つに、タイミングの問題である。今から法案を成立させても、ほとんど鎮火した火災現場に、重武装の消防車が電柱や駐車中の車をはねのけて駆け付ける構図に近い。株価が急落するのは、先が見えずに不安心理が頂点に達するからである。現時点がどうかといえば、経済活動は落ちるところまで落ちている。これ以上の落ち込みは日本が沈没でもしないかぎりありえない。
3つに、政府が企業活動に関与すれば、碌なことがないとの事実である。政府の企業への関与の極が株式投資である。ETFの購入は、東証一部に上場している全企業の株式を保有するわけだから、個別企業への関与よりもかえって悪いとの評価も可能である。
それはともかく、政府の関与は企業経営をぬるま湯にし、経営者や従業員のインセンティブを削いでしまう。従業員から見ると、経営者に文句を言われるし、政府にも文句を言われる。どっちの命令が重要なのか困惑する。さらには、当然すぐに政府が偉いと気づくのだから、経営者の命令を無視するようになる。一方、政府は企業の現場を知らないから、命令は適当であり机上の空論である。実際、政府が関与した企業のなかに立派な企業がどれほどあるだろうか。JRが一例との声があるかもしれないが、中央線に住んでいた経験からして、あの酷い(毎日ほど事故でダイヤが大幅に乱れる)中央線を十年一日のごとく運営しているJRが立派な企業だとは到底思えない。最後は思い出しても「けったくその悪さ」からの愚痴になったが。

2009/04/16


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