川北英隆のブログ

ヒモ理論からテラバンクへ

新幹線で東京と京都を往復したときに疲れるパターンがある。隣に変なのが座った場合である。今回、行きも帰りも、この疲れるパターンだった。
行きも帰りも3人掛けの座席しか予約できなかった。ただし窓際だった。普通、新幹線中では寝るだけなので窓際なら問題なし。グリーンに変更もせず、そのまま乗り込むことにした。
行きはオジさんとオバさんが既に座っていた。小柄だったので安心していたが、席にたどりつくと、真中に座ったオジさんが肘を張っていた。窓際なので少し傾いて座れば済んだが、その次にすぐ気づいたのが体臭である。きつい香水とか体臭は困る。幸いというか、こちらも前日の夕食に家内が買ってきた大量のシマラッキョを食べていたので、お互いさまかと悟り、そのまま寝てしまった。
帰り、窓際に座っていると、若い男女が横に入ってきた。嫌な予感がしたら、案の定、男がお喋りだった。しかも、このブタインフルエンザの時期にかかわらず、洟をすすり、やたらと咳をする。まあ空咳なのでいいかと思っていたら、次は話の内容が気になった。どうも男がテレビ関係の若手のプロジューサーで、女がモデルか何かから歌手デビューしようとしているらしい。いずれにしてもマイナーな地位だ。その彼らが大阪に日帰りのどさ周りをするらしい(大阪さん、すみません)。しばらくして、男が女のデビュー候補曲のメロディーをCDで聞かせ、感想を聞いた後、その曲に歌詞を付けてやるといいだした。女はデビューなので自分で付けると主張する。男は、そんなんじゃダメ、自分には文才がある、だからプロデュースするといい曲になる、ゼニは不要、名前だけ入れてもらったらいいという。女がそれでも拒否したので、男はしばらくその話題から離れたが、何回か機会を見つけては「プロデュースの契約をしようよ」と迫っていた。こういうのが「ヒモ」になるんだな、契約を迫るのなら少し投資をしてグリーンにでも乗って交渉しろと思いながら、そのうちに寝てしまった。米原で目覚めて下りる準備をしていると、男が空になったコーヒー缶を落とし、それがこちらの足元に転がってきた。仕方がないので拾って手渡してやった。ブタインフルエンザが再び心配になり、ワイシャツでしっかりと手を拭き、早々に席を立って下車しようとした。
降りるとき、乗客の読んでいる新聞が目にとまった。「充電、3メガ」とある。何かのコマーシャルかと思ったが、小見出しまで読むと、どうも3メガバンクのことらしい。歌手デビューの女と、その連れのヒモ候補の延長線上でふと考えた。メガなんていうのは紛らわしいし、もはやマイナー。今はテラの時代になった。これからはテラバンクと表記してほしいものだと。

2009/05/16


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