川北英隆のブログ

GPIFへ期待を込めて

本日の日経に年金関係の記事が2つあった。1つは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に関するものである。もう1つは経済教室である。この2つが同じ日に報じられたのは嬉しい偶然である。
経済教室は私の原稿であるので、読んでもらえればと思う。今週初に原稿を送り、本日の掲載となった。
GPIFの方は、昨日、厚生労働省の独立行政法人評価委員会(総会)が開催され、その審議が終わったので議論の内容が公表された。GPIFについては、この委員会の下に設けられた年金部会で実質的に議論され、委員会に上げられたものである。私自身、年金部会での議論から参加しており、かつ独立行政法人に課せられていた一律の経費削減目標に対して、他の何人かの委員とともに懐疑的な意見を述べていた。
経費削減の方法はどの組織でも似通っている。公平感を生み出して反対を抑えることを目標に、また本音は、どの部門や仕事が必要もしくは不要なのかの判断が難しいため、一律の削減に傾きがちである。
GPIFの仕事は巨大な年金資金の市場運用という、これまで誰もやったことのない仕事であり、さまざまな課題を抱えている。多少の経費をつぎ込むことで、運用パフォーマンスがほんの少し高まれば、それで十分にペイする。杓子定規に人件費をはじめとする経費を節減すべきではないというのが、何人かの委員の共通の思いだった。それが決議されたのは嬉しいかぎりである。
しかし、経費をかける以上、是非実行してほしいのは、本当の年金資金の運用とは何なのか、その方向性を明らかにし、それに向けて手本を見せることである。官僚的な「マイナス点だけは是が非でも回避する」組織体制を充実させることではない。必要なのは、「誰もやったことのない仕事」との意識を強く持ち、ベンチャー企業的な心意気で業務に取り組むことだろう。
経済教室で記した意見には、これまで私が耳にしてきた多くのアセットマネジメント会社の有識者の声が反映されている。アセットマネジメント会社は大顧客であるGPIF(同様に、企業年金連合会)に本音を言うことは難しい。今日の経済教室には、アセットマネジメント会社の声を間接的に伝えるとの役割もあった。この意味で、私の経済教室の記事とGPIFの記事とが同じ日に掲載されたことには、何か明るい未来を予感した。

2009/08/28


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