川北英隆のブログ

国債大増発と日本脱出

国債の発行額を巡って議論した。今年度の補正予算での新規国債の発行計画は44兆円だが、税収が予算額に6兆円以上足りず、この結果、50兆円を超える可能性が高まった。一方、税収は40兆円を割り込む可能性がある。
これまで新規国債の発行額が一般多かったのは1999年度の37.5兆円である。一方、税収が40兆円を割り込めば、1985年度以来となる。リーマンショックがあったとはいえ、時代が20年以上逆戻りする。さらに、税収を新規国債発行額が上回るのは(つまり歳出の半分以上を借金で賄うのは)、戦後初めての事態である。以上、数字に関する部分は10/20の日経新聞の記事を要約した。調べれば簡単に分かることだが、手間がかかるので、悪しからず。
問題は来年度である。市場関係者は今年度ではなく、来年度を心配している。というのも、今年度の税収が大幅に落ち込むことは既に想定されていたからだ。
ところで、10/17の日経新聞には、アメリカの財政赤字がGDPの10パーセントを超え、「米国財政の窮状についてはドル資産の信認低下に結びつく懸念もある」とあった。わが身を振り返ると、日本の新規国債発行は財政赤字に見合うものであるから、国債発行額50兆円強の規模とは、やはり日本の財政赤字がGDPの10パーセントを超えることを意味している。しかも、累積の財政赤字規模は先進国最大である。ドル資産の信任問題と同様、もしくはそれ以上に円資産の信任問題を真剣に考えなければなら事態に陥っていることになる。
幸か不幸か、ドル資産と円資産の大きな差異は、円資産、それも国債の場合はほとんどが国民によって保有されていることだ。だから、国民が愛国者であるかぎり、国債が投げ売りされることはない。裏を返すと、国民がどこまで現在の政権を信頼するのかによって、積みに積み上がった国債の運命が決まる。
10年国債の金利が2パーセントを超えたのは、瞬間的な状態を除くと、1999年にまで遡らなければならない。当時はパニック的な国債の売却が生じた。現時点での経済成長や物価の状況からして、10年国債金利が2パーセントを超えることは当面、考えられない。
しかし、市場関係者の間には、10年前のパニックの再来を懸念する声がある。パニックが生じる時とは、日本国民が、わが身を国外に脱出させるのは困難なものの、とりあえず財産の何割かを国外に脱出させようと考えた時だろう。『財政投融資ビックバン』(1997年)でエピローグ的に書いた事態が実現することでもある。そのような事態を懸念しなければならない状況に陥りつつあるなんて、10年間以上、日本経済に進歩がなかった証拠でもある。

2009/10/23


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