川北英隆のブログ

国債大量発行の影響5

国債大量発行の影響を書いているうちに、国債流通利回りが低下し、一時的に1.3%台を割り込むようになった。これで安心していいのだろうか。そんな簡単なものでないことは、明らかだ。
10月末から国債に対する投資家の不安が高まった。その投資家の不安が政府に伝わり、財政赤字を減らす努力を少し示したことが、ここ1週間ばかりの国債流通利回り低下の背景である。問題は財政赤字が本当に縮小に向かうかどうかである。
行政刷新会議が「事業仕分け」を行い、無駄な予算を削減し、さらに埋蔵金を返納させようとしている。これで予算の無駄がなくなるのなら結構なことだ。
しかし気になるのは、「事業仕分け」は森の木の間伐というか、木に巻き付いたイバラを切り払う作業でしかない。森全体、すなわち国家財政をどの方向に持っていくのかの姿が見えない。このため、イバラを切り払ったつもりが貴重な草や灌木まで刈ってしまっている可能性もある。
また、埋蔵金の返納は一回限りのものであり、来年度に期待できない。
このように考えると、国債に対する投資家の不安は第一回目の軽い発作のようなものであり、これが治まったから安心というわけにはいかない。抜本的な治療を行わないのなら、今後、発作の頻度と強度が増してしまう危険性が潜んでいるだろう。少なくとも、今回はそこらにある家庭用常備薬で対症療法が行われたにすぎないと考える。

2009/11/21


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