川北英隆のブログ

日本国債泥船論

昨日(4/9)、債券市場に関するセミナーがあった。日本国債の今後に関しての議論の中で、みずほ証券のエコノミスト、上野さんから国債泥船論という言葉が出てきた。
この泥船論は、過去にも上野さんから聞いたことがある。他のセミナー参加者の議論も上野さんとほぼ同じである。
要するに、日本の財政問題は深刻だという結論だった。とくに国債金利が名目GDP成長率よりも高いことから、このままの状態が続くと政府債務(国債等の残高)は利払いだけで自然と増えていってしまう。そんな状態に陥りつつある。
ヨーロッパ経済を揺るがしているギリシャ経済と政府債務問題よりも、実態は日本の債務問題の方が深刻である。しかし、ギリシャ国債はギリシャ国内だけでは十分に消化できない。これに対して日本国債は海外投資家抜きで消化できてしまう。だから、日本国債が売られるにはもう少し時間的余裕があるだろうという結論になってしまうし、当日の議論の結論もそうだった。
まだ、投資家がほぼ全員乗っている泥船は浸水していない。だから、もう少し乗っていても大丈夫というわけだ。金融機関も年金も、要はサラリーマンが投資の意思決定をしているから、「もう少し」という安心感に頼っている。我慢比べ、早く逃げれば上司からどやされる。
でも、浸水すればどうするのだろうか。一斉に脱出しようとしたときには大混乱が起こる。それよりは、少しずつ乗客がいなくなり、気づいてみれば誰もいなかったという方がましかもしれない。
ギリシャとの対比で、「日本はまだ金持ち」という状態が不幸の始まりかもしれない。たとえて言うと、「ええとこのボン」が堕落し、貧乏人の子供が苦境に耐えて逞しく生き抜くことになりがちだ。ええとこのボンが財布に小銭しか残っていないと気づいた時にはもう遅い。そんなことにならないよう、早くボンの生活から更生すべきなのだが、財布に紙幣が残っているうちは、何とかなるさと思ってしまい、つい衝動買いもしてしまう。道路投資や新幹線投資、その他のばらまきは、そのボンの衝動買いの一種だと思えてしまう。

2010/04/10


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