川北英隆のブログ

ちょっと見美人のGDP

2010年1-3月期のGDPが公表された。実質、名目とも前期比1.2%成長、年率に直すと4.9%成長と高かった。この数字を額面通りに受け取れれば素晴らしいのだが、いくつかアラがある。ちょっと見の美人かもしれない。
成長率が高まった主な要因は、国内の在庫調整が終わったこと、すなわち在庫の増加が見られたことと、住宅投資が下げ止まったことである。つまり、在庫と住宅投資の行き過ぎた減少が底を打ったといえる。底を売ったのは喜ばしいが、この2つの需要項目がこれから順調に増加するのかどうかが問題だろう。これらの需要項目は、経済が良くなれば増えるだろうが、積極的に経済を引っ張り上げるものではない。
個人消費には力強さがない。実質ベース(量)での増加率が勢いを失っている。一方、名目ベース(金額)では横ばい状態が続いている。家計の財布のひもが固いと言える。景気が良くなって賃金が増えない限り、消費に力強さが戻らないだろう。
また、実質と名目とで消費の見え方が異なるということは、デフレの懸念が続いていることを意味している。安くなければ買わないという個人のスタンスは、やはり財布のひもが固い証拠である。
これらの国内需要に加え、輸出が引き続き増加している。この輸出には、このブログで何回も取り上げているように、アジアと欧米とで格差がある。とくにヨーロッパのもたつきが気になる。ギリシャの問題が今後も尾を引くようなら、輸出に多くを期待できない。加えて、中国、インド、ブラジル、オーストラリアは景気の過熱を気にし始めている。中国は日本の輸出を牽引してきただけに、その経済にブレーキがかかれば、やはり輸出の勢いを減じてしまいかねない。
最後に、日本経済の体質が完全に海外依存になってしまったことである。国内需要に経済を引っ張っていく力がないから、輸出の顔色を見ながらの経済予測が続く。「1-3月期のGDPが良かったから、それが良循環して将来の日本経済を明るくする」という見通しは無謀極まりない。残念なことである。

2010/05/20


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