川北英隆のブログ

ギリシャと日本の異同

ギリシャ問題に一応の合意ができた。ユーロ圏はもちろんのこと、世界各国がIMFを通じて間接的に上納金を出してギリシャを助け、今後の危機にも対応するという。これで危機が治まらなければ、各国の上納金が増加するだけだ。
では、ギリシャと同程度の財政状態の日本に危機が発生しないのかどうか。単年度の財政赤字(名目GDPとの比率)はギリシャの方が日本を上回っている。しかし、累積財政赤字というか政府の債務残高は日本の方が上だ。なんて、変な自慢をしているような、病気比べをしているような表現だが。
そのギリシャは、強制的に財政の健全化に取り組まされる。そうでなければ、ギリシャ経済が崩壊するだろう。それとも、古代の遺跡を売却するか賃貸に出すかである。地獄の沙汰もカネ次第、陽気なギリシャ人に耐えられるのだろうかと心配になる。
一方の日本は、まだまだ資金をばら撒く時間的余裕が与えられている。政府がばら撒きのために大量の国債を発行しても、今のところ誰も困っていない。むしろ、ばら撒かれて嬉しい国民が多いし、ばら撒くことで与党の国会議員にも選挙で喜びが来るらしい。金融機関も投資先が自動的に見つかって嬉しのだろう、なんて思ってしまう。何はともあれ、まだまだ天国が続いている。
何が日本とギリシャを天国と地獄に振り分けたのか。結論は、貿易で海外から資金を持ってくることが可能なのかどうかである。
日本は、過去の技術的遺産もあり、また国民が一生懸命に働いているから、さらには貯蓄に励んで無駄なものは買わないから、貿易が黒字で、海外から資金を獲得している。その資金があるから、海外に頼らなくていい。国債が日本だけではけてしまう。これに対してギリシャの貿易収支は赤字である。だから国内に資金が不足し、ギリシャ国債を海外に買ってもらわないことにはどうしょうもない。
今後の問題は、日本の貿易黒字が続くのかどうかである。近い将来、赤字になる可能性が高いと考えざるをえない。この点に関しては次の機会に書くとして、貿易での黒字が消えれば、日本が住む天国も限界である。

2010/05/10


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