川北英隆のブログ

増税論議への議論

増税をして日本財政の再建をすべきかどうか議論が活発化しているようだ。財政の大幅な赤字とギリシャ危機が論議を活発化させたのだろう。しかし、増税賛成派の論議に関して疑問というか不思議がある。その好例が5/27の日経・大機小機(魔笛氏)である。
このコラムは、増税が消費を盛り上げるので、増税すべきだとの主張を展開している。不思議だったのは、何のための増税なのか、明示的に書かれていないことである。
一般には、政府財政が大赤字だから歳出をカットすることも必要だが、その効果には限度がある、だから歳入を増やさないことにはどうしようもないとされる。つまり、増税は不可避ということだ。それなのに、コラムでは「政府が増税した分を消費するし、さらには雇用を創出するから、結果として消費が盛り上がる」と主張しているようだ。
「ええっ」と思う。「今以上に政府が支出したいがために増税するの」と思ってしまった。「では、今ある巨額の赤字は当面ほったらかしなの」と次に思った。もちろん、政府支出が日本経済を盛り上げ、景気を良くすれば、税収がさらに増えて、その効果で借金が返済できるとの反論もありうる。しかし、1990年代の日本は、その政府の景気対策で大失敗をし、ここまで赤字を累積してしまった。それなのに魔笛氏は、今後もさらに景気対策を行うことが望ましいと主張するつもりだろうか。
政府の支出は生産活動に直接寄与しない。つまり、日本の民間活動において活力と発展性が確保されていない限り、政府の役割は限定的である。それどころか、地方空港や河川堤防が象徴するように、政府支出が環境と地方財政を破壊するため、湯水のように資金を使ってしまった例も多々ある。また、少子化対策は、たとえその効果があるにしても、はるか先である。そのはるか先の、はるか手前で日本の財政は破綻しているだろう。
まとめると、まず、現実の累積赤字をどうするのかの議論が欠落している。さらに、政府の支出が効果的だとの思い入れがある。後者に関して、そんなに賢い政府であったのなら、とうの昔に日本経済に活が入っているはずだと思ってしまった。
ついでに言うと、「仕分けで職が減るなら、別にもっと効率的な仕事を作らなければ、無駄は拡大する」という魔笛氏の文章は、少なくとも私にとって意味不明だった。

2010/05/28


トップへ戻る