川北英隆のブログ

海外進出とリスク対応

日本企業が積極的に海外進出を経っている。8/18に書いたように、遅きに失したほどである。そうかといって、海外進出にはさまざまなリスクがあることを、今回の尖閣諸島問題は明確にしてくれた。
海外進出には為替リスクが伴うのは当然である。このリスクは資金調達の工夫である程度カバーできるし、日本で生産したものを輸出する場合も為替リスクが伴う。海外進出によって、リスクの顕在化の様相が異なってくるだけである。
海外進出のリスクはこれだけではない。労働力の問題、経営の問題がある。治安もある。それに加えて、政治リスクも重要である。現地の生産設備が人質としてとられ、最悪の場合は超法規的に没収もしくは破壊されかねない。そのとき、大使館を含めた日本政府がどの程度助けてくれるのかが問題となる。
アメリカはアメリカ国民の生命と財産を守るために本気になってくれる。今回の中国の対応も、中国国民の立場からすると「必死になってくれた」と評価できるだろう。これに対して、今回に限らず、日本政府とその大使館の評価はきわめて低い。北朝鮮の拉致問題を思い起こせば十分だろうし、どこかの国で大規模なデモや暴動が起きれば、真っ先に逃げ出すのは大使館員だとの巷の噂もある(真実でないのなら指摘してほしい)。
北朝鮮の拉致問題で思い出したのは、1977年からしばらく山登りの仲間だった通産省の同年代の役人が、「川北さん、新潟の山に登って海岸付近でテント泊したり、駅で寝たりしてはあかんよ、大陸に連れ去られるかもしれないから」と注意してくれたことだ。当時から事実は知られていたわけだ。
で、本論のリスクへの対策である。当事者である企業は、政治リスクに留意しつつ、工場などの立地を総合的に判断し、できれば分散することが必要だろう。政府もまた、企業と一緒になって早急に国際化する必要がある。海外情報の確保と、危機管理態勢の整備である。これは外務省に限った課題ではない。産業政策上の問題でもある。さらに言えば、今後も逼迫状態が続くだろう資源への本気の政策対応も必要だ。
このブログを書くために調べたのが世界の人口の順位である(2008年)。中国(13.4億人)、インド(12.0)、アメリカ(3.1)、インドネシア(2.3)、ブラジル(1.9)、パキスタン(1.8)、バングラデシュ(1.6)、ナイジェリア(1.5)、ロシア(1.4)と続き、次いで日本は1.27億人で10位である。その後は、メキシコ、フィリピン、ベトナム、エジプト、エチオピア、ドイツで、ここまでの国が0.8億人以上となっている。人口の分布を睨み、構想することが望まれる。

2010/09/25


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