川北英隆のブログ

「ものづくり日本」の陥穽

日本の優位性や明るい未来を象徴する言葉として「ものづくり日本」が使われている。今日の日経の日本株運用に関する対談でも「ものづくり日本」がキーワードとして見出しに使われていた。本当なのか。
別に日本が「ものづくり」の才能に優れていることを否定するものではない。こつこつと真面目な作業を得意としてきたのは確かだろう。工芸品に優れた作品が多いことにも、この日本の特徴がよく示されている。この才能を褒めて、自慢して「ものづくり日本」と言っている。
しかし、言葉を変えれば、「こつこつ」は「ちまちま」に通じる。Japan as No.1と称せられた日本企業が結局のところ世界を制覇できなかったのも、このちまちました性格が原因の1つのように思える。つまり、世界を一網打尽にするような構想力に欠如している。マイクロソフトやグーグルや、iPodで復活したアップルのような発想力が欠如している。
細部にこだわるあまり、全体が把握できない。日本全体がそんな症状に陥っていないのか。そんな症状から抜けられないかぎり、グローバルな競争の最前線には立てないだろう。世界的な構想力を持った企業に、最適な部品を提供する企業、それが今後の日本企業なのかもしれない。この部品企業論を、日本に対する悲観論として位置付けることも可能だろう。一方、「今後、活躍する日本企業は優れた部品や材料を提供できる企業だ」と輝く株を探し求めることも可能である。私は、どちらかといえば後者の立場だが。
それにしても、五重塔、大仏殿、仁王像などの巨大な建造物を構想し、完成させたかつての日本人はどこに行ったのか。それとも、これらの作品とて人間の視野に入り切るものだから日本人の構想力の範囲内だが、現在の世界では抽象的な構想力という異次元の才能が求められていると理解するのだろうか。

2010/12/05


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