川北英隆のブログ

大震災後の日本経済

東日本大震災からほぼ4週間、何が日本経済に生じているのか。本当は3月の経済指標が出てこないことには十分なことは言えないが、かなり明らかになってきた。とりあえず、確認しておこう。
電力需要が不足することと、その長期化が確実である。東電の公表(3/25)によると、今年の夏は5500万キロワットの需要に対して4650万キロワットの供給である。約15%の不足であるが、夏の暑さによって不足率に大きな変動がある。今後に付いて、発電施設を新設するには時間がかかる。このため、電力不足の解消まで複数年必要になる。
電力不足の深刻な影響をうけるのが企業である。首都圏でフル操業できないことは国内販売、輸出、それを受けた業績、世界的な競争力に大きな影響を与える。さらに雇用にも波及するだろう。個人消費が抑制されるのは、この4週間を見るかぎりほぼ確実である。こうなると、企業業績を一層低下させる要因になる。
復興需要が日本経済にとって明るい材料とされるが、復興とは失ったものをもう一度買い求めるに等しい。個人の場合に置き直せばわかるように、「元に戻す」のには時間と資金が必要なだけで、当人にとって何もいいことはない。あえていいことを見つけるとすれば、新品になることぐらいか。
輸出入がどうなるのか、4月後半に公表される3月の貿易統計に注目したい。予想では輸出は大幅に減少である。輸入は多少の減少と推測するが、ひょっとすれば代替輸入で増えている可能性もある。いずれにしても貿易収支は減少し、赤字に転落する可能性も出てきた。貿易収支が赤字になれば「円安の片道切符」も杞憂ではなくなる。
政府にとっては赤字増大の要因でしかない。復興のための財源が必要だし、景気が低迷するため税収も低下する。増税か新規国債の追加発行か。増税は個人消費を中心に景気をさらに悪化させる。一方、これ以上の国債の発行は日本財政に対する信任低下を招きかねない。自民、民主と、抜本的な財政改革を先送りしてきたツケである。
日本経済は中途半端な改革では収まらない状況に直面している。大震災の真の波がこれから日本全体に及ぶ可能性がある。これを防ぐには、「非常事態」との認識を敗戦後と同様のレベルにまで高め、政府を中心に行動することしかない。

2011/04/06


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