川北英隆のブログ

梅が咲く頃の雨

京都も梅が咲き始めた。紅梅はかなり咲いていて、白梅は少し遅れている。そんな季節に降る雨は一番うれしい雨だ。一昨日の夜から昨日にかけ、かなり降ったので、この季節の雨のことを思い出した。
梅の咲く頃の雨には生命が宿っている。それまでの冬の乾ききった空気が雨の一滴でたちまち緩み、大地の香りをもたらすようだ。土の上に落ちた種子がゆっくりと、しかし確実にはじけるようにも感じる。
小学校から高校時代にかけて住んでいた家の小さな庭に梅があり、部屋の窓から白い花を見ることができた。早春の雨の日、摺り硝子が少し透明になったように感じて窓を開けると、雨の香りに梅の花の香りが紛れ込み、部屋の中に入ってきた。
東京に転勤となり、最初の10日間程、武蔵野に住んだ(武蔵境の北側にあった会社の独身寮)。早々にあった歓迎会が終わり、終電で近くの駅(三鷹か武蔵小金井のどちらか)にたどり着き、タクシーに乗ったのはよかったが、寮がどこにあるのか不案内だった。適当にタクシーを降り、歩いて寮を探した。暗い中、雑木林に風が吹き、雨の香りがしていた。
以上が早春の雨の思い出だろう。今の住まいはそんな環境とはほど遠い。それでも、昨日の朝、家のドアを出ると雨の香りとともに春の気配が感じられた。晴れると太陽が高く昇る。うれしい季節がそこまで迫っているようだ。

2012/02/24


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