川北英隆のブログ

浅谷輝雄氏3

浅谷さんの若かりし頃の著書、『生命保険の歴史』(四季社、1958年)が届いた。どこかの大学の図書館にあったものを「除籍」したものだ。思っていた以上に参考になりそうな図書である。
浅谷さんの略歴がわかった。1926年10月、東京生まれだそうだ。僕の母親と同じ年である。ということは寅である(生まれた年はすでにわかっていたのだが、寅とはまでは計算していなかった)。東京大学理学部数学科を卒業し、1951年に大蔵省に技官として入省されている。
これは浅谷さんから直接聞いた話だが、当時の数学科には宇沢弘文氏がいて、「(数学で)彼だけには負けた」とのこと。宇沢弘文氏は1928年生まれ、1951年に東京大学理学部数学科を卒業している。
『生命保険の歴史』は2部に分かれている。第1部は生命保険の誕生とその後の発展である。浅谷さんはさまざまな文献を丁寧に読むタイプの方だった。生命保険の歴史についても隈なく文献を探されたと推察する。この意味で生命保険の歴史に関する貴重な日本語の文献だろう。最初のページを開くと、1583年から記述が始まっている。
第2部は生命保険技術の発展である。アクチュアリーとして大蔵省で活躍された浅谷さん本来のテリトリーである。生命表と保険料の計算、保険会社の負債(責任準備金という)の認識、保険料の調整手段としての配当に関して書かれている。この手のアクチュアリー分野の発展に関する図書は日本に稀有だと思う(研究対象ではないのでよく知らないが)。
生まれ月、逝去の月である同じ10月に、浅谷さんのことを書けたのはせめてもの罪滅ぼしとなっただろうか。

2012/10/31


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