川北英隆のブログ

株価と国債価格同時上昇の矛盾

安倍ちゃんの登場によって市場に何が生じたのか。周知のように、円安、株価上昇、国債価格の上昇(利回り低下)である。大胆な金融緩和期待が発端で、3市場への投資に多大な利益をもたらした。
でも、これらの3市場の、投資家にとっての理想の状態は並立可能なのか。株式と国債価格の同時上昇は、一時的にはともかく、長続きしないというのが専門家の一般的な見方である。しかし、「みんなで渡れば怖くない」、「一人で待つのは怖い」のが心情だろう。
日本の金融緩和が、欧米の今の流れと逆モーションであるのは確かだ。そうだとすれば、景気の良くない日本、資金がさらにあふれる日本から世界に向けて資金が流れ出るだろうと予想される。国際収支の現状以外に、単純な金融面からの理由からも、円が売られて円安になることが説明できる。
円が売られれば輸出産業を中心に、上場企業に利益が転がり込む。だから株価が上昇する。ここまでの流れに対しては、大きな疑問がない。問題はここから先である。
株価が上昇し、景気が良くなれば何が起きるのか。デフレ脱却の可能性が生じる。実際にデフレから脱却できれば、その物価の上昇率に応じて金利も上がってしまう。すなわち、国債価格の低下が十分に予想される。それにもかかわらず、現実の国債市場は逆の動きとなっている。大胆な金融緩和が日本経済には効果をもたらさず、デフレからの脱却もありえないと予想していることに等しい。
そうであるならば、現時点までの円安の効果はともかく、それ以上の恩恵は日本企業に及ばないことになる。つまり、企業業績の向上が大したことがないとの予想である。この予想が正しいのなら、株価の上昇は一時的なもので終わり、やがて増益への期待がしぼんでしまい、株価の上昇力が消滅するか、むしろ株価下落に転じてしまう。
では、株価上昇と国債価格の上昇が並立しうる筋書きはないのか。一縷の可能性はある。大胆な金融緩和が時間の経過とともにさらに大胆になることである。円安を一段と進行させ、輸出企業の業績をさらに持ち上げることだと言える。とはいえ、この状態は安倍ちゃんの経済政策の狙い、巷間アベノミクストと称されている政策の完全な破綻を意味する。「(日銀が)ゼニを撒けども撒けどもデフレ道」の「谷頭火」の状態である。その結果は、日本の政府財政と経済の破綻だろう。どこかで、日本の株価と国債価格が暴落しかねない。
まとめれば、株価と国債価格の上昇は通常では並立しえない。現在、両者が並立しているのは、非常に危険な結末(正確には、その直前までの花見の宴)を市場関係者が暗黙のうちに予想しているからかもしれない。そうでないのなら、株式投資家か債券投資家のどちらかが間違っている。

2013/03/22


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