川北英隆のブログ

投資信託の役割とは

「投資信託をはじめとするファンド形成のあり方と、そのファンドの役割」を議論した。この結論として、「得意とする分野なり、ノウハウが必要だ」となったが、では何社が該当するのか。
背景には投資理論が相当広まっていること、その投資理論に基づく運用が容易になっていることがある。容易ということは運用手数料が小さいことに結びつく。特定の指数の動きを模倣する投資を例にとると、個人投資家には、インデックスとほぼ同じように変動するETF(exchange traded funds)が提供されている。かつ、そのETFがネット証券で買える。
この現実を直視するのなら、投資信託も証券会社も、現在のビジネスモデルを変えることになろう。すなわち、投資信託は独自の特徴やノウハウを提供しないかぎり、投資信託という商品を叩き売るか、営業力に物を言わせて売らないといけない。これでは投資家は幻滅だろう。一方、証券会社は、現状のまま特色のない投資信託を営業力に頼って売り続ける状態に追い込まれるか、手数料の薄いETFに力を注がないといけない。
日本の証券市場の衰退(今は少し回復しているように見える)の一端は、投資信託と、その資金運用業務を系列会社でもって担ってきた証券会社にある。長期的に証券市場を育てようとの発想に乏しく、とりあえず儲かればいいとの意識が強かっただろう。
これでは市場の駄目度合が増すだけである。そもそも、個々の機関にとって株式投資が何を目指しているのか、自分たちの立ち位置、すなわち投資の基本を明確化することからして要請される。「投資理論に基いて運用します」だけでは、何も言っていないに等しい。

2013/04/24


トップへ戻る