川北英隆のブログ

金融市場の若返り期待-企業

一昨日は東京で二人の話を聞いた。昼には教職員共済生活協同組合で年金や保険の資産運用を担当しているH氏、夕方には大手企業で財務担当執行役員をしているY氏である。次はY氏。
Y氏は、銀行、事業会社、外資系投資銀行を経て、元の事業会社に戻り、現在は執行役員の職にある(この世界をよく知っている読者には、ははあんと来るはずだ)。一昨日は研究会発表にY氏が登壇するので、研究会に紹介した僕としても責任上、出席した。座が盛り上がらないとサクラ質問もしないといけない。
当日の発表内容を一言にまとめれば、「企業経営はROEと資本コストとの差異を意識すべきであり、それを投資家に開示しないといけない」となる。ROEとは株主資本利益率であり、ここでの資本コストとは株式の形態で提供した資金に関して投資家が期待している投資収益率のことである。(一言にまとめると言いながら)要するに、「資本コストを上回るROEを目標に経営すると、企業は宣言すべきだ」。
日本企業の多くが大量の現金と現金同等物を保有していることに関しても、経営者の保身ではないかと、実証分析を交えて手厳しかった。ということで、Y氏の属する会社は、数値的な経営方針の明確化と、その公表に積極的に取り組もうとしている。
これに対して、質問があった。第一に、鉄鋼大手が「鉄は国家なり」、「利益率を高められないとしても存続の必要がある」と主張したときにどう返答するのか。第二に、小売り企業であるスーパーとして、「この地域の利益率が低いから撤退する」との経営的決定は、「地域への貢献」を考えるとできないのではと。
これに対して僕は次のように考えた。
鉄鋼大手に関して。まずは、幹部を含めて賃金コストが高すぎるのではないか。これはかつての東電にも通じる議論である。また、この鉄鋼業界の主張と同類の議論が、日本の農業に関してはるか昔からなされてきたことにも注意が必要である。その農業は、結局は国際競争力を失った。そんな大上段に天下国家を盾として自己防衛する前に、とっととグローバル展開を果たし、「安い鉄は海外で、誰にも真似できない鉄は国内で作ることを考えたらどや」と思う。
スーパーに関して。スーパーの撤退が地域にとって大問題となるそもそもの要因は、実家(郡山)の体験からして、スーパー自身が地域の商店街を破壊したからだと思っている。その身から出た錆を人質に、収益率が悪いのはどうしようもないと居直られたのでは、こっちが困る。スーパーの経営を工夫し、立て直すことで、地方にとって必要不可欠な品物の供給を継続しようと努力することが本来の経営である。その努力を怠り、「(スーパーとして)どうしたらええねん」と居直られてもねえというところだ。
最後にY氏は、合理的な意思決定のできる若者が増えているから、それが日本企業の明るさだと語っていた。そのような若者を企業は積極的に採用し、重用しないといけない。

2013/10/20


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