川北英隆のブログ

ホトトギスの乱鳴きする峠

先月は集中的に大文字山でトレーニングした。今月もと思っているが、梅雨に突入したので、どうなることか。その大文字山、いつも書くようにホトトギスが多い。先日は姿まで見てしまった。
スリムな姿である。縞々の模様がある。登山道のすぐ上の木で鳴いていた。眩しい太陽を透かして探していると、相手も気づいたのだろう、飛び立った。その姿を目撃したわけだ。
ホトトギスで思い出すことがある。南アルプスは北沢峠の下、戸台川でのホトトギスである。カッコーも交じっていたと思う。それらの声が谷にこだまするほどに響き渡っている。鳥の姿が見えないから(小さな点で見えていたかもしれない)、乱舞ではなく乱鳴きと名付けてみた。
大学4年生の時である。6月上旬だったと思う。初夏の南アルプスに入ろうというので、友達2人と一緒に出かけた。
伊那市からバスで戸台に入り、沢に沿って丹渓山荘経由で北沢峠に着き、その日は馬ノ瀬ヒュッテに泊まったと思う。小屋ではあるが、まだ夏季営業の前、雪に半分埋もれた状態だった。シュラフは持参していたが、夜中にえらく冷えた覚えがある。
翌日、仙丈岳に登頂、北沢峠まで戻ってついでに甲斐駒ヶ岳を往復した。その帰り、戸台川を歩いていて出くわしたのが、ホトトギスとカッコーの乱鳴きである。見上げると、青い空を、駒ケ岳から鋸岳にかけての峨々たる岩稜が区切っていた。
それで、学生の身分で時間があるはずなのに、サラリーマン的なスピード登山をしたのには理由があった。京都に戻っての翌日、内々定をもらっていた某最大手証券会社の健康診断があったから。「疲れてしもたから、診断結果が悪いかも」と冗談を言いながら列車に乗った記憶がある。もっとも、もう1社(日本生命)からも内々定をもらっていたので余裕があったのだろう。
日本生命時代の最晩年、野村証券の役員と飲んでいて、その内定の話をしたところ、「川北さんでは野村は勤まらない」と言われ、仕方ないので大笑いした。見透かされていたわけだ。人一倍時間をかけて働くのは趣味でないから、それを要求されたらダメだっただろう。時間以外の要素で働いても評価してくれる会社に潜り込めたから、それが良かったのかも。
「それとホトトギスの何の関係があるのや」と文句が出そうだ。最後に無理矢理に関係を付けよう。彼/彼女らは子育てを省く(他の鳥に託す)生き方を選び、代わりに谷で乱鳴きする。それでいて俳句に読まれるのだから、すごいわけだ。
他人と同じことをしていたのでは平凡なまま終わる。平凡で気が済まないのなら、つまり「奥様は魔女」的な生き方をしたいのなら、少しひねらないといけない。ホトトギスは子育てをやらない代わり、テッペンカケタカ、ハゲタカと歌い、それをひねりにした。
「奥様は魔女」の意味が分からない場合:この有名なテレビ番組のオープニングナレーションは「ごく普通の二人は、ごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。でも、ただひとつ違っていたのは・・奥さまは魔女だったのです」だった。

2014/06/07


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