川北英隆のブログ

原油価格と世界経済

原油価格が下落している。他の鉱物資源も同様である。原油価格の下落は経済にプラスの影響をもたらすとの評価があり、日経新聞もその効果を強調しているが、これは嘘に近い。
原油価格の低下は、石油に対する需要の低下を反映している。アメリカが自国でシェールオイルを大量に生産するようになった影響もあるが、とくに中国の経済成長率の減速の影響が大きいだろう。
中国は現在、年率7.5%の成長を目指しているが、この率は「気合い」というか「国内の混乱と、政府への信認低下を避けるための目標値」の感がある。労働力人口がピークアウトを迎えつつある現在、非常に困難な目標設定を迫られているように感じられる。日本の高度成長は15年間程度だった。中国の場合、図体が大きいだけに、15年間も高度成長が続くことだけでも難しい。
議論を元に戻すと、世界経済の成長の予想が、中国に対する強気の影響もあり、高すぎたのである。現実よりも高い経済成長を予期し、石油資源の掘削と供給が行われたため、原油価格が急速に下落している。このことを言い換えると、世界経済の成長率を高めるために原油価格が引き下げられたのではない。世界経済の成長率がスローダウンしているから、原油価格が低下したのである。
この点、金利水準の低下と同じである。経済の状況が芳しくないから、中央銀行が金利を下げるのである。経済が健全であれば、金利水準の低下がやがて経済を浮揚させるであろう。この金利水準の低下に象徴されるように、原油価格が低下したからといって、今日か明日に経済成長率が高まるほど単純ではない。
気になるのは、原油や資源価格の低下が世界経済の軽い不況入りを意味してはいないかとのことである。そうであるのなら、世界的に株価が頭打ちから少しの下落に転じるだろう。そうなったからといって、長期の投資家にとって、いいお湿り(株価下落)でしかないのだが。
僕の評価として、欧米の株価はリーマンショック前の最高値を更新しているから、それが一休みすることは歓迎である。バブル的にならなくて良かったというところか。株価が毎日上がることはない。毎日上がれば要警戒である。それと同様、市場全体の価格も押し目がないと様にならない。高値では誰も買いたくない。売り手が売り惜しんでいることでもある。
某日経新聞の記者が言っていたように、新聞として「その日の出来事を書く」が王道である。だから、記事が短期投資家的なってしまう。読者としては、もう少し経済全体の動きを把握しておかないと、結局は大儲けできないのだが。

2014/12/11


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