川北英隆のブログ

株式を買って何を期待するのか

今日、さる研究機関で講演をしていて、気づいたことがある。実は知り合いの某証券会社会長の質問への回答でもある。企業として配当をすべきかどうか、すべきではないかと問われたことによる。
質問に対する回答なので、十分に意を尽くせていなかっただろう。時間の制約もあるので、それを気にして(この点はO型人間の特質なのか)、端折って答えたこともある。そこで、正確に書いておきたい。
僕の基本的考え方は、少し前にも書いたように、投資家、とくに個人投資家にとってみれば「株式投資として儲かればいい」のである。ここで、儲かるという意味は、サラリーマン投資家に代表されるように、「ほったらかしておいても」、つまり「時々刻々変化する株価を見なくても」、数年すれば期待した利益か、それ以上のものを生み出してくれることである。
日本の場合、残念ながら積極的な事業展開をしている企業が少ない。とすれば、利益のすべてを成長のために使う企業は皆無に近いから、配当(自己株式取得を含む)が投資収益率の相当部分を占めるようになる。ではというのでアメリカを見ると、事業活動によって巨額の利益を獲得しているのに、無配の企業がある。
グーグルが典型であるが、今日の講演で出した名は、投資の神様として崇められている(ここまで来ると、どうかとも思うが)バフェット氏であり、バフェット氏が経営しているバークシャーハサウェイ(念のために書いておくと、上場企業)である。
投資の神様が何故無配を選択しているのか。その理由は簡単であり、日本の状況をイメージと簡単に説明できる。
つまり、配当で現金をもらったとして、それを消費に使わない場合、どうすればいいのか。銀行預金にしておくと金利を生まないから、困ってしまう。これに対して、無配のバークシャーハサウェイに預けておけば、その預けた資金を、専門家の視点から有望な企業や事業に投資してもらえる。その投資によって、銀行預金よりもはるかに高いリターンが生み出され、それがバークシャーハサウェイの株価を押し上げるのである。もう付け加えれば、配当として毎年現金が支払われれば課税対象となる。一方、株価の上昇となれば、その株式を売却しないかぎり税金を支払わないですむ。
ということで、経営者が積極的であり、かつ税金に対する意識の高い(企業経営者として、投資家の立場で物事を考えている)アメリカでは、いくら巨額の利益を挙げていても無配(かつ自己株式の取得をしない)企業が大手を振っている。日本企業としては、アメリカの大胆な(経営理念とその理念を達成するための道筋を一般に表明している)状況には今すぐ到達できないだろう。しかし重要なのは、経営理念だけは明確にし、それを投資家に説明することである。そうすることにより、自由な経営が可能になるのではなかろうか。

2015/03/04


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