川北英隆のブログ

税金はなるべく遅く払うのが得

昨日の配当への税金に関して、「値上がり益として、いずれ同じ税金を支払えば、損得はないのでは」との質問をもらった。少し説明を端折ったので、数値例に基づいて追加で説明しておきたい。
計算しやすいように、簡単な例で示しておく。想定する期間を1年とする。
現時点で企業から100万円の配当を受け取ったとする。これに対して原則20%の税金が差っ引かれる。20万円である。
もしもこの企業が配当をしなかったとして、また配当を内部留保した金額分だけ株価が上昇するとして(さらに、これ以外の株価上昇要因がないことも仮定している)、1年後にこの企業の株を売れば、配当をもらったのと同じ100万円の売却益が得られる。税率は原則として配当と同じ20%、金額は20万円である。
このことを税務署(すなわち国)の立場で考えてみよう。国として、現時点で20万円の税金が得られれば、1年間運用できる(現実には国は借金しているから、20万円分借金を少なくできる)。利子率を1%とすれば0.2万円の利子である。一方、売却益に対する税金は1年後に20万円であるから、運用できず、20万円ポッキリが得られるだけである。
以上の例では、その差0.2万円だけ、国として配当に対する税金の方が得である。裏から見れば、投資家として、上の例で示した配当は0.2万円損である。この損失は目に見えるわけではないので、機会損失という。
ここまで読んで、配当とは方向が異なるが、怒りを覚えないだろうか。というのもサラリーマンは給与から税金を毎月天引きされている。年間所得に対する税金の先払いというわけだ。サラリーマンは所得を完全に把握されたうえに(個人営業者の所得は不完全にしか把握されていないのに)、損な税金の前払いまで強いられている。
今は金利がゼロ近いからいいようなものの、かつて金利に意味があった頃、僕は「何とかしてくれや」と憤っていた。

2015/09/07


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