川北英隆のブログ

革新が起きている時代に生きる

今日、最大に注目していたイベントがあった。囲碁のトップ棋士とコンピュータとの対戦である。囲碁の世界でコンピュータが囲碁のプロに勝つのはまだまだ先と思われていたのだが、あっさりと勝ってしまった。
今回の囲碁のプロは韓国人であり、関心があれば誰でも知っている(知らないとモグリの)トップ棋士である。コンピュータのソフトはグーグルが開発している。
今日から短期間に5回対戦するらしいのだが、コンピュータが初戦を勝ったというのが事実である。グーグルのソフトは最近、プロの棋士に勝ったのでにわかに注目を集めていた。しかし、「勝った相手はプロではあるが、トップではない普通の棋士」と評価されていた。だから、トップ棋士と対戦すれば、コンピュータが負けるのではとの前評判だったと思う。それが今日、勝ってしまったのだから、大変である。
日本では将棋のソフトを「資金力のない」チームが開発してきた。それでも、プロが勝てないまでに強くなっている。これに対し、囲碁の世界は盤面が広いだけに、将棋よりも大変な計算量が求められる。それでもグーグルの資金力だからだろうか、予想を覆して勝ってしまったわけだ。事件である。この事件は、人口知能に対する評価が一段シフトアップした瞬間でもある。
思うに、ちまちました技術と物作りの重要性を多少は理解しているものの、日本に必要なのは、もっと大胆な発想と、それに集中できる態勢ではなかろうか。「選択と集中」という用語が注目を集めたのは、はるか昔である。しかし、日本の企業はそれができていない。日本政府も予算の使い方がふらついていて、浮気症である。海外からの観光客が増えたからといって、すぐに「観光重視」「大学も観光学を」と吹聴するのは何なのか。「文系はいらん」と公言した舌の根がまだ乾いていないのではとしか思えない。
国家戦略、企業戦略の失せた時間帯を日本が過ごしている間に、グーグルが囲碁の世界で一気に5年以上を飛び越えてしまった。そんな嫌味な表現をしないといけないほど、衝撃的な事件が囲碁の世界で起きたわけであり、この衝撃は自動車の自動運転や自動翻訳の世界と直結している。ともかく、今日の事実を真剣に受け止めたいものだ。少なくとも株式投資には、このセンスが求められるだろう。

2016/03/09


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