川北英隆のブログ

日銀の株式購入は売り材料

日銀が株式を買ってくれることに対する市場の期待が大きい。買うから「下がらない」、特定の株式は「上がる」というのが構図である。短期的にはそうだろうが、もう少し長い目で見ると、「日本の株式なんて買うもんやない」と言える。
もう一度言うと、「日本の株式は買えない」のであって、どうせ株式を買うのなら「海外企業の株式」を買うべきである。この一番の理由が、日銀が市場の株式全体を買ってるのに株価が一向に上がらないのは、日本の株式が(平均的に)魅力がないことに尽きる。また、日銀がどんな株式でもいいから買っているため、多くの企業がバブリーな、言い換えればアホな価格になってしまった。
皮肉を込めて言うのなら、日銀が市場全体を買っているのに株価が上がらないので、日本の株式が平均値として「ダメやん」と分かってしまったと思える。見方を変えると、海外市場が史上最高値を更新しているのに、日本の株価が低迷しているのは何故なのか。「日本の多くの企業って何をやってるんや」ということになってしまったと思っている。
もう少し、グローバルに市場を眺め、それと日本とを比較したいものだと思う。今の大手の投資家は、かつての成長企業だという実績だけに基づいて市場を見ていないだろうか。過去の実績に拘るのは分かるのだが、過去だけで企業は生きていけない。日本社会全体として、イノベーションを最重要視し、行動の原則を求めるべきだろう。
投資市場はグローバル化している。ヘッジファンドなどは、投資対象をグローバルに増やすことで、裁定取引の範囲を広げようとしている。一方で、ヘッジファンド以外の投資家にとっては、投資市場の何が役立つのかだろう。
両者にとってのキーワードは価格形成の歪みだろう。ヘッジファンドは歪みを売買の対象とすることから、日銀の株式購入は短期的な売買のチャンスを提供してくれている。他方、ヘッジファンド以外の投資家には、日銀(加えて公的年金)の強引な買いによって株価が強引に上方に置かれているとすれば、株式を買うことには中長期的なリスクがある。
つまり、短期的にはともかく、長期的に投資家は日本の株式市場から逃げていく。ということで、「アホやん」株式市場は遅かれ早かれ投資家の信任を失う。株式に投資したいのなら、日本と異なって自由に売買できる海外市場である。少なくとも日本の真の投資家は、「堪忍や」「できれば日銀が買っているから、このチャンスに売りや」だと思っているのだが、そう考えること自身、そもそも企業や役所が考えていた姿から大きく離れている。

2016/09/09


トップへ戻る