川北英隆のブログ

コンゴは生産の概念のない国か

帰りはキンシャサから出国した。最後の難関だった。何人がイミグレーションで「マネー、マネー」と呟かれたらしいが、「ノーマネー」と呟き返したところ、無事パスポートが帰ってきたそうだ。
アフリカ諸国では、選挙が行われなかったり、選挙の結果を受け入れようとしなかったり、政治的な無秩序が目立つ。最近ではガンビアの大統領選挙で、22年間政権を維持してきたジャメ大統領が、しばらくの間、選挙での敗北を受け入れなかった。このため、一時は隣国からの武力介入が懸念された。
コンゴ民主も同じである。前大統領のカビラ氏の任期が12月19日に切れた。それなのに選挙を実施せず、居座り続けている。カビラ氏は2001年から数えて2回大統領に選出されている。憲法が3選を禁じているから、もう大統領にはなれない。それにもかかわらず、資金がないとか、有権者名簿を更新できていないとかの理由で、選挙を実施していないらしい。そもそも過去において、有権者名簿がどの程度整備されていたのかも怪しいが。
反対派のリーダーが平和的な対応を表明しているので内戦には発展していない。カビラ氏との間では、今年中の選挙で合意がなされたとか。とはいえ、この合意が実行に移されない場合、事態は深刻になりうる。
ベルギーの植民地だった時代、コンゴでは略奪的な統治が行われていたらしい。その影響がどの程度残っているのかはともかく、コンゴ民主には「生産する」という考え方がないに等しい。
水が豊かだから、コンゴ川の中洲で稲作をすれば豊かに実るだろう。現状は、自然に実るものを収穫し、動くものを捕る文化である。中古の機械類は(船のエンジンがそうだが)上手に直す。しかし、国内で新品は作れない。ベルギー時代のクレーンや鉄道は放置されたまま錆びている。
今や奥地にも携帯が普及しつつある。その電源は小さな太陽光パネルである。お金がいる。大きな魚を1匹200円くらいで売っていたのでは収入が不足する。そこで一足飛びに「マネー、マネー」呟くことになる。どこでも、誰からでも「マネー」「食べ物」の呟きが聞こえてくる。大統領が居座るのも、その職が金になるからだろうか。
我々の現地ガイドも、このマネーでスイッチが切れてしまった。どこかで儲けに誤算があったのか、どこか地方の役人にマネーをふんだくられたのか、最後の2日間は「お金がない」という理由でサボタージュしてしまった。途中で我々からドルを借りる始末だったから(ATMで現金を下ろして返してはくれたが)、本当に手持ち資金がなくなったのか、コンゴの旅行会社から与えられていた予算が切れたのだろう。
最低限のことはしてくれたものの、コンゴ共和国(ブラザビル)の観光が実質ゼロに近かった。数百ドルもらえるはずの我々からのチップを帰国日に要求しなかったから(我々も払わなかったから)、余程のことがあったのだろう。
写真は途中でキャンプした村である。川岸に大勢(大人の男はいなかったが)集まって歌っていた。歓迎の歌かなと思ったら、「お金くれ、お金がないと入れないよ」と歌っていたらしい。笑って歌っていたから本気度は不明だが、そういう文化である。
人口が爆発している国コンゴ民主、生産しなければ食にも困るに決まっている。もう大型の動物や鳥は姿を消した。頼みのコンゴ川も汚れていく。
「これからはアフリカの時代」と誰かが演説したが、現実を直視しているのだろうか。キンシャサにも立派な官庁、大使館、高級住宅の集まる地域がある。そこだけを車で移動したのでは、本質を見失うだろう。
村のゼニ歌.JPG

2017/01/22


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