川北英隆のブログ

情けないESGの形式的調査

ネットの記事を見ていたら、本当に情けなく思える日経の記事が見つかった。
http://www.nikkei.com/markets/company/article/?ba=1&ng=DGXKZO14106940V10C17A3X93000&scode=6502
記事を要約すると、次の3点である。
1. 東芝はかつてESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からの優良企業だった。
2. 質問票などで計算するESGスコア、つまり評点や格付けには限界がある。
3. 投資家はESGにおいて東芝に騙された。
E(environment、環境)とS(social、社会)はともかくとして、G(governance、ガバナンス)の観点において「東芝は財務諸表の虚偽を社内で見抜けないほどコンプライアンス(法令順守)が脆弱なガバナンス体制の会社だった」(日経の記事)ことになる。
この記事の最後に、「投資家は外形的な情報だけでなく、企業とのエンゲージメント(対話)を通して企業の重要情報を見極める必要性が今まで以上に増している」とある。ここまで読んで、「そうしたら、普通のESG調査会社はえらくいい加減なんや」、「やっぱし表面的な数字集めしかしていないんや」と納得した。端的に言うと、多くの調査会社は流行りだからESG調査しているにすぎないのだろう。
某N調査会社の引用されている発言、「ESGスコアには限界がある。投資家はその企業のマテリアリティ(重要課題)を見極めて検証する必要がある」というのも気になった。「調査会社は外形だけで点数を付けているだけなので、最終責任がそのスコアを使う投資家にあると言わんばかり」、「普通のESGスコアって、その程度のものなんや」と。
3/3のブログで書いたように、単純なスコア計算だけで判明しない事実について、同じESGの調査会社であるグッドバンカーはいろんな手段を使って情報収集し、それに基づいて、計算したスコアや格付けの修正を行っている。ここに大きな手間暇がかかる。だからグッドバンカーは会社としてあまり儲かっていない(黒字だと認識しているが)。
ついでにもう1点。この記事に「最近は点数取りに走る企業もある」、「不都合な情報を開示しない企業も存在する」とある。先日、グッドバンカーで議論していたら、どうも大手著名企業がESG調査に向けてお化粧をし始めているのではないかとの情報があった。その企業、グッドバンカーのヒアリングへの拒否を始めたらしい。
では、当該企業のESG格付けをどうするのか。まだ結論は出ていないが、お化粧のためにESG調査会社を差別的に取り扱うのなら(適当に妥協する会社を優遇するのなら)、その企業を要注意会社としてアセットマネジメント会社に報告すべきだとの意見があった。「経営陣がええ恰好をしたいなあと呟くか怒鳴ったのなら、それに合わせて部下が仕事をする」というわけか。現在紛糾中の某企業と同じである。没落へと片足を突っ込んだのかもしれない。

2017/03/21


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