川北英隆のブログ

東芝上場維持の判断への批判

10月6日、日本取引所自主規制法人は東芝の上場維持を決定(特設注意市場銘柄への指定解除)した。これに対して批判の声が多い。僕自身が市場関係者といろんな場面や話題で話していると、その批判が突きつけられる。
批判の1つは決定の時期に関して。「何故、10月初旬なのか、もっと早く決定できなかったのか」という小言である。そもそも事件が発覚したのが2015年4月だから、2年半もかけて何をしていたのだという。
2年半かかった1つの理由は、東芝の経営が泥沼に近かったから。つまり、片足を抜いたと思ったら、もう片足が沈む状態だった。複雑怪奇だったとも言える。
それともう1つは、やはり名門中の名門だから秀才従業員がたくさんいる。こちらの要求や指導に(表面的かもしれないが)適切に対応し、行動する。また、優良事業部門という体力もあった。だから、上場維持に関しても、廃止に関しても、決定打がなかったと感じている。
これがそこらのヘボ会社だったら、こちらの注文や質問に対して反応がないか、反応があってもすぐに馬脚が現れる。赤字も積み重なってしまう。この差である。
大会社だから潰せないのではとの批判もあるが、規模が大きいだけで、体力がなく、秀才従業員もいなければ、最終決定までそんなに時間が必要だとは思えない。
何故、10月初旬だったのか。これには明確な理由がある。
8月10日、東芝は2017年3月末決算に対して監査法人から「限定付き適正意見」をもらい、決算書を公表した。この瞬間、ボールが自主規制法人に投げ返されたことになる。
その後、2週間ほどかけて、自主規制法人はその決算書と監査法人の「限定付き適正意見」の背景を分析した。東芝にどの程度の責任があるのかの分析である。次の1ヶ月間は、これまでの分析の総まとめに費やされた。膨大な資料と審議過程があるから、(直接作業をしていない者から見て)1ヶ月の時間は仕方ないのではと思う。その後の2週間を使い、理事の間での意見交換を急ぎ行い、臨時理事会を開いて結論を出した次第である。ボールが手に渡ってから、大急ぎで、しかし慎重に結論を出したのではないだろうか。
もう1つの批判は、選挙もあり、上場廃止にできなかったのではと。これに対して、1つ言えるのは、東芝の結論を出す日程の決定は、選挙と無関係との事実である。ボールが自主規制法人に戻ってきたからには、早急に結論を出さないといけない。この意識が先にあり、それと「選挙をしたら勝てる」との偉い人の思惑とが偶然に重なっただけである。
「東芝の上場維持はけしからん」、「大きいから潰せなかったのではないか」との批判には、理事会で反対意見があったことを繰り返して述べておきたい(10/11と10/12を見て欲しい)。理事会では真剣に議論されたのである。
もっとも、上場維持の結論が正しかったのかどうかは分からない。時間の経過とともに徐々に判明してくるだろう。

2017/10/17


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