川北英隆のブログ

高額所得者って誰なのか

年金、介護や医療、教育、日本は墓場から出発して、ゆりかごまでの完全福祉国家を目指しているそうな。問題はこの福祉政策の資金源である。多くは税に依存せざるをえない。そこで高額所得者に目が行く。問題は、誰が高額所得者かである。
報道によると、年収800万円超の個人を高額所得者として所得増税の対象にするとか。年収800万円超が(一説には850万円超が)高額所得者なのかどうかの疑問はともかくとして、この手の議論でいつも思うのはサラリーマンの不幸である。
今日の日経に先を越されたが、所得を捕捉するための仕組みをザルのまま放置しておいて、捕捉した所得金額でもって税金の徴収や年金の支給などに差を設けようというのは、政府の怠慢であり、弱い者いじめとしか思えない。
サラリーマンだけを職業とした家庭に育ち、そのままサラリーマンになると疎くなるのが日本の徴税システムである。そもそもサラリーマンは確定申告と縁遠い。せいぜい医療費控除くらいか。だから、疎くなる。
「確定申告をしなくていいから、サラリーマンは税的に簡単、便利がいい」なんて思うのは、流行の言葉を使って表現すると、税リテラシーの欠如そのものである。むしろ、確定申告する権利を奪われていると認識すべきである。
(僕の実家がそうだったように)事業を営んでいると、何を経費として損金に算入するのかが大きな問題となる。乗用車を購入し、それを得意先訪問するのに(つまり営業に)使ったとして、その購入費を税務上の損金として扱えるのかどうかである。実際、実家はそのことで税務署と議論をしていた。税務署の主張は、私用にも使っているから経費として扱えないと。
もっと言えば、たとえば京都の老舗などで支払いをすると、多分に、こちらから言わないかぎりレシートや領収書をくれない。収入として税務署に申告しないのだろうと思ったりする。そうだとすれば、乗用車の購入代金が経費かどうかの議論以前の話となる。材料費や人件費は確実に申告するだろうから、要するに店にとって税的に「丸儲け」になる。消費税を上乗せしていれば、丸儲け以上だろう。
このように所得捕捉の仕組みをはじめとする徴税システムをザルのまま放置しておいて増税の議論をするのは、政府の怠慢である。同時に、多くのマスコミが無責任だからでもある。マスコミとして、徹底的に政府の怠慢を追求すべきだろう。
個人番号制度が導入されたことだし、企業にも番号を付け、個人営業者や企業の番号が書き込まれた公的領収書を必ず渡すようにすること、これがまず必須である。
プライバシー上問題だとの反論が常にあるが、せいぜい財産が政府に知られるだけではないか。知られて困るのは、それこそ本当の高額財産や所得を隠している者だけである。高々801万円の年収の者を含め、ほとんどの一般国民には無縁である。そんなこともマスコミには理解できないのかと思ってしまう。

2017/12/08


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