川北英隆のブログ

偽インターンシップへの仇討ち

大学は期末試験の季節になった。担当している講義も期末試験を実施する。出席時にアンケート兼出席票を配布しており、12回中9回以上の出席を要請している。と、「企業からインターンに呼ばれたので出席数が足りないのだが」との質問が例年のようにあった。
今年は、企業の人事担当者から「誰それ君をインターンに呼んだので、やむなく欠席になりました」との一筆を、メールでも紙でも何でもいいのでもらえれば、その日の授業を出席扱いにすると学生に返事した。企業に少し仕返しをしないといけないこともあったので、こう決めた。
いつも書くように、企業の就活の無茶ぶりは酷い。その酷さが年々増すようだ。新聞にも、1日インターンが増えていると書いてある。要するに、インターンを騙っているだけであり、一種の詐欺だとしか思えない。1日で会社の何を伝えることが可能なのかと、考えて見れば明らかだろう。実態は面接だったり、一次選考だったりする。
人事担当者が真犯人とは思わない。真犯人はその上司の経営者である。「新卒を採用しないといけない」との一心というか、思い込みから詐欺まがいの行為を黙認しているのだろう。
その後で、「採用した学生の質が悪い」、「何を大学は教育しているのか」と、文句をのたまう。こちらとしては、「勉強させなかったのは誰や」と反論しているのだが。
そもそも、今の日本の大会社の人事制度というか社員制度、給与体系が時代遅れである。新卒だけが人材ではない。4月に一斉に入社させるだけが能でない。この点は外資系企業の人事制度を見習うべきだろう。
年齢や性別に関係なく、また採用時期にこだわらず、能力ある人材を募集するのが本筋である。そうしようとすれば、企業文化として一般化できる部分と、技術などの特殊な部分を分けることになるかもしれない。そして、特殊な部分はその企業の価値の源泉であるから、それにふさわしい人材には十分な対価を支払う必要がある。
本当のインターンシップは、「わが社の価値はここにある」と、企業にとっての特殊部分の一端を見せることだろう。そのためには、これぞと思う学生を、夏休みや春休みを利用して期間を長くとり、給与を支払い、集めることに尽きる。
そんな本来のインターンシップを一介の人事担当者が提案し、実行できるとは思えない。だから、それができていないのは経営者が真犯人だと断定できる。
何回も書いたことだが、就職に関して僕が学生に言うのは、最初に就職した企業を1つのキリアパスぐらいに思い、社会人としての勉強を続けることだと。変化の早い時代に終身雇用なんてありえないではないか。

2018/01/22


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