川北英隆のブログ

老人社会になれば問題が続出

友人とメールで情報を交換していると、老人社会が抱える問題がいろいろ垣間見えている。日本はまだ完全な老人社会でないので、それらの問題が顕在化していないだけである。行政がこの問題をどこまで認識し対応するのか、課題が多い。
よく言われるのが財政的な困難である。年金にしろ、医療や介護にしろ、働き盛りの人口との対比で働けない老人が多くなる。とすれば、誰が将来の年金や医療資金の面倒をみるのか。この問題は早くから指摘されているのだが、いまだに行政的な対応が果たされていない。
次に、労働力不足の問題である。「そんなん知ってる」ってとこだが、現実はというと、絶対数が不足しているとの問題だけで片付けられているようだ。このため、女性のみならず、老人を投入しようとの議論が大勢を占めている。
日本が直面している問題は、量もさることながら、質の重要性がより高い。
たとえば、土木工事を誰がやるのかという問題である。「ロボットがあるやろ」かもしれない。でも、日曜大工や庭の工事をすればわかるように、細かな作業がどうしても生じる。そんな作業までロボットにできるのだろうか。
教育も労働の質の問題を問うている。保育園から大学までの教員が十分なのかどうかである。今の給与水準と、教育に対するクレームの過激さ(少しのミスも許せないという風潮)からすると、若手で教員になるのは「でも、しか」人材しか残らないような気がする。そうすると、日本が「教育の質の低下、輩出される人材の質の低下、そして教育の質の低下」の悪循環に陥るのではなかろうか。
医師、病院、老人施設の問題も深刻である。これこそ友人のメールから聞こえてくる問題の核心でもある。
たとえば、老人施設に入った両親が入院を必要とする病気になったとき、どこの誰がその両親を受け入れてくれるのかである。今の病院は患者から医療費を取りはぐれることを怖れている。算術重視である。だから、救急車で運ばれたとしても、すぐに親族に連絡する。でも、その親族が遠隔地に住んでいればどうなるのか。ましてや、老人の一人世帯ならどうするのか、入院拒否なのか。
これは僕自身の経験でもあるのだが、「そんなに医療費の取りはぐれが心配なら、現金を前金で入れるやん」「クレジットカードを白紙で切るやん」と提案しても、そんな制度が整っていないし、考えようともしない。だから、「とにかく連帯保証人を」と要求される。とすれば、一人暮らしの老人は、多少の資産があったところで見捨てられざるをえない。
医師の問題も教員の問題と根が同一である。今でこそ医師の人気はそこそこ高い。でも実態(勤務の厳しさや年収が噂ほどに高くない)とのギャップが大きいから、人気がどこまで続くのか不明である。
また、今の医師が老人になれば、いつか書いたように、「うそー」という診断も増えてくる。他人のレントゲン写真で診断される例は日常茶飯事のようだと、直接、間接に体験してきている。とすれば、いずれ医師の質が大問題になりかねない。
マンションの問題も深刻になるだろう。まず、誰が管理し、掃除してくれるのかである。管理会社から派遣される多くは、気が利かないか、よぼよぼの老人である。管理会社から払われる時給が(断っておくが、マンションの管理組合から払う時給ではない)、最低賃金に近いから仕方ないものの、そんな老人でさえ近い将来には集まらないかもしれない。
以上をまとめると、今後の老人社会で生じることは、量とともに質の問題が大きいだろう。政府が推進しようとしている、「老人にもっと働かせる政策」がどこまで正しいのかという問題ともからんでくる。とくに、少し高い知識水準が要請される職業と老人がマッチするのかとのことでもある。
同時に、事務や単純な判断を流行のAIで補完することで、できるかぎり老人の量に頼らず、かつ老人の質を補う政策の必要性である。とはいえ、より重要なのは、老人にとって労働は片手間でしかないとの事実だろう。このことを十分に理解したうえで、老人に優しく、かつ老人が安心して暮らせる社会を行政として早急に設計して欲しい。

2018/04/03


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