川北英隆のブログ

新聞の正しい読み方

今日(5/5)の某日経新聞を読んでいていくつかのことを思った。新聞の良いところ、悪いところのことである。正しく新聞を読むには、ある意味で狡猾さが必要かもしれない。いずれにしても周辺情報に目配せしないといけない。何のこっちゃ。
感じたことの1つ目は、某日経の1面に連載されている「生産性考」というコラムである。今日のこのコラムの見出しに「ルールは自ら変えていく」とある。この点は4/21に書いた任天堂のDNA、「朝令暮改」と相通じる。
僕自身、「J-MONEY」という金融専門誌に原稿を頼まれ、次のような文章を書いた。「ルールは何のためにあるのか。守るためではない。それぞれのルールには具体的な目的がある。その目的にルールが最初からそぐわないか、いずれそぐわなくなれば、ルールを変えるべきである」と。またこれに関連して、「既存の枠にとらわれない自由さ」が重要だとも指摘しておいた。
日本社会はルール至上主義に陥っていないのか。今日の「生産性考」にもあるように、ルールがなければ動けないし、動かないし、逆に既存のルールを盾に既得権益を固守しようという輩が跋扈する。政府は前例主義だから、どうしてもルール至上主義者側に傾いてしまう。
2つ目に、この同じコラムにブロックチェーン技術への言及があった。いわゆる仮想通貨(僕のブログで幻想通貨とか仮想取引物と名付けたもの)ではなく、エストニアが提供を始めたという「秘匿性の高い情報をネットで安全にやり取りするシステム」に関する言及である。そのシステムをブロックチェーン技術で作ったとか。日本政府や政治家が幻想通貨こそ未来の技術そのものだと勘違いしたこととの比較で考えれば、世界の行政の進歩は実にまばゆいばかりだ。
3つ目は、5面のトップにある「米企業、1-3月業績好調 株式市場は冷めた反応」という記事である。その中に「アップルは・・25%増益となる好決算を公表したが、株価は3月に付けた高値を回復できていない」と書いてある。知り合いの記者が書いているので申し訳なく、また何たる不運に見舞われたのかと共に嘆くのだが、実は昨日の市場で(日本時間で今日の朝)、アップルは上場来高値を付けた。
この記事の命はせいぜい数時間だったようだ。もう少し書くと、僕がこの記事をじっくり読んだ背景には、「アップルが大幅上昇した」とすでに知っていたことがある。それで、「変な見出しの記事やな」と思ったからだった。
新聞の、それも短期的な株価や市場動向を伝える記事はこの程度のものだろう。読者としては適当に読むべきだし、記者としても今日や明日の情報だけで「真実はこれだ」と意気込んで書けばしっぺ返しを食らう。
ついでに書くと、私事ながら3月は多忙だった。出張が続き、新聞をろくすっぽ読んでおらず、「いずれ読むべきもの」として積んであった。それをこの連休にようやく読破したのだが、実際のところは3月の新聞なんてほぼ読むところがなかった。要するに記事が腐っていた。
4つ目だろうか、新聞記者というのは(多くの学者もそれに近いだろうが)、数日、せいぜい数週間の命しかない文章を大量生産する空しい職業かなと。開き直れば、どの職業もそうなのだが、何年、何十年と錆びない、腐らない仕事をいくつ残せるかが勝負だろう。こう思えば少しは気楽になる。この程度のいい加減さがないと生きていけないような。

2018/05/05


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