川北英隆のブログ

地方銀行株の凋落

銀行株が冴えない。その中でも地方銀行株の凋落が目立つ。地方銀行株のどこが問題だと感じるのか。
9/21現在、時価総額1000億円の銀行が47行もある。上場している銀行(ゆうちょ銀行を含む)は89行だから、半分以上が1000億円に達していない。もちろん、上場している銀行株の大半は地方銀行である。
そのうちの3行(福岡中央銀行、島根銀行、豊和銀行)が100億円割れである。しかも銀行株のPBRは3行(セブン銀行、あおぞら銀行、豊和銀行)を除いて1倍を割っている(セブン銀行とあおぞら銀行は地方銀行ではないが)。PBR1倍割れとは、不良資産や経営的な問題さえなければ「バーゲンセール」だとも言える。
上で書いた銀行の名前を突き合わせると、時価総額100億円未満でPBR1倍割れの銀行が2行ある。共に地方銀行である。100億円の資産があれば、「ひょっとして、大安売りの銀行を買えて、しかも頭取になれるかも」というわけである。
以上は半分ジョークとして(半分は本気なのかい)、かつての地方銀行株は地方の名士の資産形成を助けた。銀行も地元の有力企業や名士に株式を持ってもらった。
僕が会社員となった当時もそうだった。銀行株の株価変動はほとんどなかった。売りが少なく、買いたい(多くは銀行が持ちかけた)投資家が多かったからである。配当が安定していて、数年に1回、額面割当増資があり、それが資産形成を促進させた。
この背景にあったのが、銀行が儲かる事業だった事実である。儲かるとわかっていても、参入には当時の大蔵省(今の金融庁の)規制があったから、銀行を新たに始めるのはきわめて難しかった。まとめれば、銀行とは儲けが保証されている事業だった。経済学で言う、「レント」のある事業だったとも言える。
レントという用語を知らなかったものの、僕にとって就職先として地元の南都銀行が有力候補だった。大学の人脈が少ないと思い、結局のところ訪問しなかったが。
社会人になってすぐに投資した株式が、野村証券と住友銀行だった。野村証券や住友銀行は絶対に値上がりすると思ったし、日本生命が株式会社ではなかった(相互会社であり、株式という概念がない)こともあった。結果は予想どおりだった。保有株数が少なかったのが大いなるミスだったが。
その銀行株だが、この10年の投資収益率はどうだったのか。日銀の金融政策によって金利がゼロになったことにより、当然ながら銀行株のパフォーマンスは冴えない。
今年8月末現在、過去10年の(つまりリーマンショック直前からの10年間で)投資収益率(配当込)がプラスだったのは、10年間連続して上場している73行うち30行でしかない。さらに、東証株価指数(配当込)より投資収益率が高かったのは、わずか4行である。
銀行株のパフォーマンスが悪いのは、1つに、地方経済はもちろん、日本全体を見渡しても経済が冴えないことである。もう1つは、政策的に金利がゼロ%に抑え込まれているからである。これでは、銀行が国内で儲けるのが難しい。東京を基盤とする大銀行はともかく、地方銀行にとって最悪の状況である。
ついでに興味深い事実を発見した。日本銀行の株式(正確には出資証券)である。普通の株式ではないし、経営も実質政府が掌握している。とはいえ、日本銀行の時価総額は376億円である。
この事実はともかく、この10年間の投資収益率(配当込)は年率マイナス9.65%だった。しかも、これより悪い銀行が皆無だった。株式投資家として、日銀を「最悪」だと思っている証拠だろう。日本銀行が株式の投資パフォーマンスを気にしているとは到底思えないが、事実は事実である。

2018/09/24


トップへ戻る