川北英隆のブログ

金融庁フォローアップ会議メモ

金融庁で「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が開催された。その中から、親子上場とESGに関する議論をメモしておく。
親子上場に関しては経済産業省が「コーポレート・ガバナンス・システム研究会」を開催して議論しており、そこでの方向性(上場子会社関するガバナンス強化の案)が示された。支配株主(親会社)出身者を取締役として選任しない、独立社外取締役を過半数置く、親会社として子会社を上場させている合理的理由を開示させるなどである。
僕としては、この議論の方向性に反対はしないが、一番肝心の議論が抜けていることを指摘した。会議では婉曲に「巨大企業が親子上場していること」と表現したが、要するに政府系企業(NTT、日本郵政)が親子上場している事実の認識である。政府が模範を垂れないことには(すなわち親子上場を解消しないことには)、日本市場における親子上場問題は解決しないと考えている。
もう1つは、東証が上場区分の見直しを行っていることに関連して、たとえばプレミアム市場を新たに作るのであれば、親子上場企業をプレミアム企業として選定しないことであると指摘した。この場合の親子上場に関して、そう定義する数値基準、すなわち持ち株比率をきちんと定めるべきことも指摘した。基準を曖昧にすれば、プレミアム企業として選定されるために政治的圧力が働きうる。
これに関して、座長の池尾さんは、親子上場の場合、子会社の少数株主はディスカウントされた株価で投資している(投資家は子会社が親会社の言いなりになるリスクを嫌い、安値でしか投資しようとしない)から、結局のところ投資家は損をせず、親会社が損をしている。つまり、安値で株式を買っている子会社の少数株主は保護の対象にしなくていいのではと指摘した。この点、インデックス投資を採用し、全体として株価を持ち上げている投資家(代表的には日本銀行や公的年金)をどう考えるのかの問題が残ると、僕は思っている。もう1点、池尾さんは、僕と同じ意図かどうか不明ながら、東証の上場区分の見直しに際して親子上場を意識すべきではと指摘していた。
神田さんは、親子上場に見られるような支配株主の存在に関して、非上場企業が支配株主の場合や、オーナーのような個人が支配株主の場合などを明確に意識して議論すべきだと指摘した。この点は金融庁が僕に事前説明をしてくれた際、同様に、親子上場の定義が難しい(いろんな支配株主が存在する)ことを指摘しておいた。
次にESGに関して、神作さんが疑問を呈し、重要な要素ではない、総花的なことになりかねないと指摘した(意訳して書いた)。僕はこの点と同様の発言を先にしていたこともあり、また少し会議の時間が余り気味だったので、次のような追加の説明をした。すなわち、評価会社の評点だけを追うような総花的なESG投資は疑問であり、EやSに関する投資先企業の独自性が何なのか、投資家としての調査の過程において見つけることが重要だと。

2019/03/05


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