川北英隆のブログ

出し抜き投資術の社会的貢献は

今日の日経1面トップに「新顔データ、投資先読み」と題した記事があった。例として、従業員らの位置情報のデータから、テスラの業績回復を見越し、利益を得たヘッジファンドの例が述べられていた。
これを読み、2つのことを思った。
1つは、そんなことで儲けたところで、社会に何の貢献もしていない。かえって無駄な所に資源を投じさせていると。
有名な例に、人工衛星から石油タンクの状況を知り(タンクの上蓋の位置からタンクに入っている石油の量を知り)投資する方法もある。テスラの例も石油タンクの例も、そんな情報を特定の投資家がいち早く知ったところで、社会全体の役には立たないし、そんなことで仕事をしたくない。給与をもらいたくない。いずれ知れる情報だからである。
もしも早く知ることに(天気予報のように)社会的意義があるのなら、それは公的機関の役割である。私的機関がある情報をいち早く得て、それが役立つと思うのなら、他の投資家を出し抜くことにではなく、もっと役に立つ使い方を工夫すべきである。
同じ記事には、アメリカが「インサイダー情報」に近いとして規制する動きもあると書いてあった。他の投資家を出し抜くという観点からすれば、テスラや石油タンクの例は、企業の内部情報をいち早く入手し、儲けることと大差ない。市場を混乱させ、市場の信頼性を失墜させる意味で、社会的な悪となりうる。
もう1つは位置情報に関して、「そんなもの、通常は切っておけや」と思う。オフにしても裏側で位置情報が集められているらしく、それに対する規制も強化されたが、僕なんかはスマホの電源自身を通常はオフにしている。これなら位置情報は集められない。
スマホの電源を常にオンにすること、その上で位置情報もオンにすることが、どれほどのメリットをもたらすのか。そんな緊急に情報や会話を交換する必要性なんて、普通人が普通の状態で生活している限りないはずである。
個人の場合、普通は半日やそこら返事が遅れたところで何の支障もない。勤務時間中なら別だろうが、その状況下においては会社がパソコンもしくはスマホを貸与する。
断っておくが、僕も必要時に(山歩きや海外の見知らぬ土地などで)位置情報をオンにしている(当たり前か)。ただし機内モードでGPS情報を得る場合が多い。これなら誰にも位置情報を知られない。実際、グーグルから「先月の思い出」なるものが位置情報に基づいて送られてくるものの、知られていない訪問場所が多い。「知らんやろ」と楽しみになる。
思うに、情報の時代は人間をアホにし、アホな行動に誘惑する。要注意である。

2019/05/04


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