川北英隆のブログ

資産の形成方法は単純-1

老後に必要な資産をどう形成するのか。方法は単純である。貯金しているだけでは駄目、円資金だけでも駄目である。グローバルに考え、かつ間近に迫ったリスクに備えなければならない。最初にグローバルな視点について述べておく。
公的年金の給付水準に関して政府が明言を避けてきたように(それで不足するとは言ってこなかったように)、資産形成に関して政府が明言していない事実がある。政府にとって不愉快な事実なのだろう。
論理的に語ろう。
まず、円で預金しても金利が付かない。タンス預金だと火事とか空巣だとかのリスクがあるが、預金だと銀行が潰れないかぎり大丈夫、これが唯一無二のメリットに近い。
金利が付かないと、老後の資金が積み上がらない。1年間100万円(月8万円強)貯められたとしても、金利がないと20年でようやく2000万円である。老後、家賃を払わなくてもいいように自宅を持ちたいと思えば、その2000万円さえ貯まらない。とすれば、預金ではなく、債券や株式を活用することになる。
ここで、政府にとって不愉快な(不都合な)事実が明らかになる。つまり、日本国内にどれだけ投資対象があるのかどうかである。
まず、国内の債券のリターンはかぎりなくゼロに近い。しかもデメリットがある。出し入れが自由でないし、社債であれば企業が潰れかねない。個人として、そんなものを投資対象と考える必要なしである。政府は、日本国債(国としての借金)に投資してほしいため、この事実に言及しない。
もっとも、海外の債券もリターン面では魅力に乏しい。高金利通貨の国は政情が不安定なこともあり、為替レートの暴落がありうる。欧米などの先進国の債券は、日本ほどではないにしても金利水準が低く、為替レートの変動率の方が大きい。とはいえ、先進国の債券であれば投資対象となると僕は考えている。理由はこのブログの続きで述べる。
次に株式である。これにも、政府はもちろん、多くの株式投資の関係者が語ってこなかった事実がある。日本市場全体の株価が欧米に劣後してきたことである。言い換えれば、欧米の株式に投資すべきであり、日本株は余程の企業でないかぎり避けたほうがいい。
1989年12月に日本の株式市場は最高値を付け、いまだにその高値を抜けないでいる。欧米はとうの昔に当時の水準を超えている。大雑把に言って、アメリカとドイツの株価は7倍以上、EU離脱でもめているイギリスでさえ3倍を超えている。
そんな30年前のことを持ち出さなくてもというところかもしれないが、2000年1月と比べても、日本はようやく当時の水準程度、欧米は2倍の水準に達している。
日本の株式市場が冴えない理由はいろいろあるが、玉石混交であることが大きく影響している。日本の株式であっても、冴えた企業の株式は当然上昇している。ということは、日本を代表する名門企業、大企業を買えばよかったのか。残念ながら、その名門大企業に総じて冴えがなかったから、日本の株式市場全体が冴えなかった。
ということで、最初の結論が得られる。資産形成には株式投資が欠かせない。それもグローバルな視点からの投資である。そのリターンは為替レートの変動にも十分耐えられる。もしも日本株に投資するのなら、企業を選ばなければならない。欧米であれば、市場全体(たとえば株価指数に連動するETF=上場投資信託)に投資してもある程度のリターンが得られる。
一つだけ、株式投資の注意点を指摘するのなら、長期投資に徹することである。短期売買で儲けようなんて考えてはいけない。短期売買はゼロサム(誰かの儲けは誰かの損失)ゲームでしかないから。長期投資は、経済もしくは企業が成長するのであれば(これまでそうだった)、プラスサム(誰もが儲かる)状態が実現する。
コマーシャルながら、この株式投資に関する分析は「京都大学の経営学講義3」の第7章に書いた。株式の長期投資に興味があれば読んでほしい。

2019/06/29


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