川北英隆のブログ

EUの南北の差を考える

スペインを旅行して、ついでだからEUの中のスペインとは何かを考えてみた。ほんの少しだけだが。結論は、EUに存在する南北の経済格差が歴然としたように思えた。
EUという経済圏が作られ、通貨がユーロに統一された。EU域内の国が、アメリカや日本などのEU域外の国と経済取引をする時、最終消費者の手には単一通貨であるユーロを介して物やサービスの売買がされる。日本とであれば、1ユーロが120円少しである。では、この交換レートが妥当なのか。
最近、僕はドイツに旅行していないので体験していないが、知り合いは「水が高い」と嘆いていた。500ミリのペットボトルが1ユーロする。日本円で120円である。日本なら余程の銘柄水でないかぎり、100円するかしないかだろう(日本であまり買わないが)。
ではスペインはどうなのか。少し前に書いたように、2リットルが50セント、つまり60円である。この水は一番安かったのだが、少し高級なのでも高くなかった。ドイツはもちろん、日本と比べても安い。とすれば、知人のように「水が高い」と嘆かなくていい。
水だけでなく、ジュース類も安い。500ミリだったか、濃くて美味いグァバジュースが100円だった。何回も書くように、少し高級なワインが1000円も出せば手に入る。
アルコールを適当に飲み、料理を満足いくまで食べても、2人で4000円もしない。ちなみに、今回一番高かったのはウサギ料理屋だった。2人で7000円を超えたが、残念なことに、量がありすぎて骨付きウサギのグリル(美味かったのだが)を相当残してしまった。
ユーロという通貨の交換レートはEUの平均的な経済力が基準となり、市場で決まる。よく言われるように、ドイツの製品には国際的な競争力があり、経済が強い。スペイン、イタリア、ギリシャの国際的な競争力はドイツより劣る。美的センスは逆だが。
これら各国の経済的競争力の平均値がEUとユーロの位置づけとなる。このため、スペインにとってユーロは強過ぎ(過大評価され)、ドイツにとっては弱過ぎ(過小評価)となる。その結果、ドイツ経済はEU域外との貿易で潤い、スペイン経済は潤わない。
1人当たり国民所得(2016年、万ドル)を比較すると、ドイツ4.32、フランス3.74、イタリア3.13、スペイン2.67、ポルトガル1.93である。所得格差が歴然としている。多分物価の高さもこの順だろう。ちなみに日本は3.99、物価が無茶苦茶高いとされるスイスは8.04、実際に旅行してべらぼうに高かったノルウェーは7.44である。
では、そんなEUに南の国々が何故加盟しているのか。域内を自由に行き来でき、自由に貿易(物やサービスの売買)ができるからであり、出稼ぎに行けるからである。スペインからすれば、EU域外との貿易が多少阻害されても、ドイツなどの域内へ活発に物を売ることができれば、そのメリットの方が大きいからである。
加えて、南欧の規制の緩やかさは地下経済を活発化させているだろう。地下経済を意識せずとも、農業を営んでいれば、自家消費ができる。それが国民所得統計にどの程度補足されているだろうか。
旅行して思ったのはスペイン人が明るいことだった。あくせくした雰囲気がなかった。昼(といっても14時頃)、サラリーマン風の人たちが歩道上に設けられたテーブルでビールやワインをのんびりと口にしながら談笑している。交通ルールは歩行者優先である。ポーランドほどではないが、道を横断しようとすれば、車が止まってくれる。日本社会にこんな余裕があるだろうか。
実は、フランスやスペインといったラテンの国の運転は荒いとの印象を保っていた。かつてのフランスでの経験からである。それが間違っていたわけだが、この新しい事実はEU加盟の効果なのかどうか。どこかで確かめなければならない。
写真はマドリードの食料品店に並ぶハムとチーズである。ハムの値段は不明だが、チーズは安すぎる(農業保護とかで、日本が高すぎる)。
20190610マドリードの食料品店.jpg

2019/06/10


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