川北英隆のブログ

蛭の土産

奈良の帰り、土産として奈良漬を買った。京風奈良漬なるものが、何のこっちゃと京都で売られているが、さすが何のこっちゃでコクがない。それで、奈良に行けば必ず奈良漬である。
家に着き、奈良漬を渡し、ハイキングのシャツとズボンを着替えていたら、後ろから「足が赤いけど、どうしたんや」家内が叫んだ。「何を言うてるんかな」と足を見たが、よくわからない。
「右のふくらはぎの下や」というので、もう一度見たら血が相当の面積で広がっている。でも、痛くもない。どこから血が出ているのかと、こびりついた血を拭いながら探したら、針で刺した程度の傷口からだった。そこから少しずつだが、まだ血が出てくる。
過去の経験から、蛭に食われたと判断した。
それは40年ほど前の屋久島である。永田岳からの下り、永田の村の手前に着いた時だった。ズボンの膝付近に小さな赤い染みを発見した。どこかで怪我をしたのかと思って探ったところ、蛭が1匹、膝の横に食らいついていた。血を吸って太っている。引っ張って剥がしてもいいのだが、傷口が大きくなるとか、なんとなく危険を感じた。
ふと思い出したのは、蛭が塩に弱いという子供の頃の経験だった。溝に人間の血を吸わない大きな黄色い蛭が棲んでいた。気持ち悪いので退治するのだが(考えてみると、血を吸わない蛭にとって迷惑なことだが)、その方法の1つに塩をかけるというのがあった。
幸いにも当時は非常用としての(今で言うとポカリスエット的役割を期待して)塩が少しザックの中に入っていた。それを蛭にかけた。蛭は食いつくのを止め、ポタリと地面に落ちた。塩がなければどうするのか。オシッコを代用にするしかないかも。
蛭は落ちたものの、血は止まらない。友人が持参していたカットバンを張り、自然に血が止まるのを待つよりなかった。
今回の蛭は十分に血を吸い、満足して勝手に地面に落ちたのだろう。そう思いつつ傷口にカットバンを張り、ハイキングの片付けを続けた。と、1センチ程度の茶色く細いゴミが床に落ちているのを見つけた。
「モミの葉の枯れたのかな」と思った瞬間、そのゴミが動いた。蛭である。まだ血を吸っていないから細いようだ。ズボンに付いていたのだろう。シャクトリムシのようにゆっくり動く。仕方ないのでティッシュに塩をまぶし、それで蛭をつまんでゴミ箱に捨てた。
どこで蛭を拾ったのか。蛭は木の葉の落ちている地面に潜んでいることからすると、芳山かもしれない。もう1つの可能性は石仏付近である。
蛭、そもそもは鹿の血を吸っている。その鹿の行動範囲からすると石仏付近が一番怪しい。いずれにしても奈良公園、恐るべしである。
「ウチは何にも知らへんし」とシカトしている奈良公園の鹿をアップしておく。
20191022奈良公園の鹿.jpg

2019/10/22


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