川北英隆のブログ

目先の利益しか見ない観光行政

観光公害が世界的な問題になっている。確かに、どの辺境に行っても観光客がいる。これらの観光客、地域によってマナーの良し悪しがある。辺境は観光客が比較的心得ているが、有名観光地は酷い。日本も同様だろう。とはいえ、日本にはほぼ辺境がないに等しい。
かつて屋久島が世界遺産になる前、森林の調査に入ったことがある(何のこっちゃだが)。その時に地元の有識者が心配していたのはトイレとゴミ問題だった。観光客が増えた時、その処理をどうするのか。
屋久島と白神が同時に自然遺産の登録された後、これらの地域に足を踏み入れていない。だからどう対処したのかは知らない。
日本への観光客を増やせば国内が潤う。そう想定するのは単純過ぎて、「アホやな」である。数年前まで、政府は訪日外国人数が史上最高だと誇り、業者はインバウンド景気を謳歌した。それに味をしめ、もっと海外からの観光客を増やそうと意気込んだ。やはり単純すぎるのか、それとも目先の利益しか見ていない(見えていない)。
その後の現実はというと、外国からの観光客部増えることにより、マイナス効果が明らかになった。
まず、そこら中が混んでいる。昨年だったか、祇園のある店に行くと、外人がいろいろとアホな行為をするので困っていると。日本人なら小さな赤鳥居を塀などに張り付ければいいのだろうが(小便禁止かいな)、外人には通用しないし。
ついに祇園は堪忍袋の緒を切ってしまい、「私道での撮影禁止」の高札を掲げたらしい。それよりは、粋な私道に入るための入域料を舞子や芸子が徴収すればいいのではないか。前にも書いたかな。
いつも文句の対象にしている新幹線も酷いものだ。大きい荷物を持った観光客のせいで乗降のため時間がかかるようになり、遅れが目立ち始めた。先日なんか、京都駅の男子トイレに長蛇の列ができていた。もう一度言うが、女子トイレではない。
そんなことは些細である。一番心配なのはテロ的な行為だろう。それに対する新幹線の対策は警備員のパトロールだけ、気休め程度である。一番心配なのはクルーズ船である。大量の観光客がやってくるのに対して、危険物などの監視体制が整っているのだろうか。非常に心配である。これも以前に書いた。
では、政府は何をしているのか。少しは反省し、考えているのだろうが、大したことをしているとは「承知していない」(政府的な表現)。むしろ業者寄りで、依然として観光客が増えることを大歓迎している。
このことは富士山の入域料に象徴されている。本来、入域料は徴収すべきであり、それが世界の常識であるにもかかわらず、現実は業者に迎合し、強制していない。
富士山をはじめ、世界遺産への登録には熱心であるのに、その後は「ゴミの野となれ山となれ、富士山となれ」なのだろう。
先日歩いた春日山領域も一緒である。世界遺産なのだが、監視が不足している。世界遺産としての巡視員が必要だし、本当はその費用として入域料を徴収すべきである。
僕が見た限り、コーヒーカップが何個も捨てられていた。混雑する歩道や電車の中で見かけると、「こいつ、本物のアホやな」と感心してしまう、あのコンビニなどのカップである。
春日の奥山の世界遺産もそのコーヒーカップで泣いていた。とすれば、僕が食われた蛭、ひょっとして最強の世界遺産防衛隊かもしれない。「春日の神鹿が下された最終兵器」というわけだ。

2019/10/27


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