川北英隆のブログ

日本に創造的破壊が必要

日本の株価が冴えない。足元、アメリカの主要株価指数が史上最高値を更新し、今はその近辺にある。これに対して日経平均株価は未だ3万円の壁を越えられない。何が彼我の差を生み出しているのか。思うに日本企業に経済を牽引する力がない。その象徴がトヨタだろう。
今の日本経済の代表選手がトヨタ、正確にはトヨタのみである。最近復活しつつあるソニーを除き、かつて日本を代表した企業が次々に凋落している。名前はあえて挙げない。
その中にあってトヨタが頑張っている。生き残って世界と戦っているのがトヨタなのだが、最近は逆風が強い。電気自動車への流れが世界の潮流となり、トヨタのこれまでのエンジン技術が化石になりかねない。むしろ中国やヨーロッパはそれを狙っている。巨大産業である自動車において世界を牛耳るためである。
それに対してトヨタの反応は欧州や中国ほど積極的でない。また電気自動車のためには、電力インフラ(発電、蓄電、充電)の整備と強化が必要なのだが、政府や電力会社は原子力という過去にこだわり、近未来を現実的な目で描こうとしていない。自動車産業が未来の日本経済の力を決定づけるとの意識にも乏しい。
ではトヨタが世界との戦いに敗れればどうなるのか。これこそ日本の株式市場が抱える最大の懸念材料である。
トヨタが世界の第一線から消えれば、日本に残る世界企業があるのか。もちろん世界的に活躍している企業は日本にもたくさんある。しかしそれらの企業の規模は、残念ながら巨大ではない。というのも、今の日本における世界的企業の多くが部品メーカーだからである。部品を扱っているから規模はどうしても一回り小さくなる。
同時にGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アマゾン)に相当する企業が日本には存在しない。唯一の例外はソフトバンクだろうが、投資ファンドだから「他人の褌で相撲を取る」だけであり、日本をリードする企業ではない。
ここで疑問が生じる。「どうして日本から世界的な企業が消滅していったのか」「その代わりが登場しないのか」である。簡単である。経営陣がサラリーマンに徹しているからである。
大企業になり、創業者が引退し、サラリーマン経営化していった。そんなサラリーマン経営者の目標は保守的である。企業を潰さないこと、面目を保つことに絞られる。自分の代での経営破綻はありえないとしても、大きな苦境に陥ることだけは避けたい。でも表面的には隆々としているように見せたい。その代表事例が東芝である。
そうだから、一般的にサラリーマン経営者は大きな投資をしなくなる。これでは半導体など、世界的な競争に勝てない。新規事業もちまちまとしたもの、表面的に恰好良いもの、もしくは後追い的なものになる。これではGAFAに対抗できない。
日本企業の復興に必要なのは既存勢力、既得権益の破壊だろう。政府もまた、既存企業の支援機関にならず、是々非々で客観的に対応すべきである。権力を握った企業や団体であろうとも、潰すものは潰していかなければならない。つまり創造的破壊である。
これを受けてサラリーマンに必要なのは、勤務している企業がいつ潰れても仕方ないという覚悟である。そうすれば、上司であろうが社長であろうが、堂々と意見を言える。新たに社会人となる場合、起業も重要な選択肢となるし、一方で医者になるなんて普通の選択肢になってしまう。最近を見るに、今の大学生には多少ともこの傾向が強まっているようだ。普通の企業に勤めても、良くて平々凡々、下手すると奈落の人生しかないとの判断だろう。
以上の状況が整うと、企業は大胆な決断を迫られる。魅力ある企業に留まるために、もしくは魅力ある企業になるために、時には一世一代の決断と実行が求められる。
そうでなければ今の日本企業的なジリ貧を覚悟しなければならず、従業員から見放される。当然、株主からも。もう少し大局的に見れば、すでに世界の株主から見放されつつあるのかもしれない。これが今の日本の株価に反映していると思えてならない。

2021/07/18


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