川北英隆のブログ

株式の配当取り戦略の変なの

9月末から2ヶ月近く経過した。「9月末」と書いたのは、日本の株式投資にとって9月末が重要だからである。何故なのか。株式配当の権利落ちが多数発生するからである。
保有している株式に対する配当(金利みたいなもの)は、特定の日の株主に対して支払われる。特定の日とは「権利確定日」である。つまり、「権利確定日のたった1日だけ、株式を保有していれば配当をもらえる」となる。
ここでさらに考えると、「そのたった1日だけ株主になったら配当をもらえるって、そら大儲けじゃん」となる。えらく得をしそうな話しである。これが「配当取り」という、実は有名な株式投資戦略である。
本当なのか。本当であるわけがない。「本当そうだ」と言い触らす輩がいたのなら、詐欺師とは言わないまでも、実態はそれにほぼ同じだろう。「新聞や証券会社さん、御免なさい」に近いのだが。
まず、権利確定日はほぼ特定できる。日本であれば決算期末と確定している。3月期決算企業が多いから、3月末である。加えて、日本では半年ごとに配当を支払う企業が多いため、9月末も権利確定日になる場合が多い。
アメリカの場合、権利確定日は企業が適宜決め(過去のパターンからほぼ特定できるが)、公表している。だから注意深くないと「配当をもらい損ねる」。その他の国の企業について、僕として配当に着目したことはないものの、日本のように一斉に権利確定日を決める国には気づいていない。
本題に戻ると、「そのたった1日だけ株主になったら、配当をもらえて大儲けじゃん」とは誰しもすぐに考える。だから「他の投資家が動いたらいけないので、念のために一足早くして、2日間株主になろう」という投資家が出てくる。同様に3日前、4日前も。最終的には、予想される配当金額を日割りして、「その日割りの金額だけ高くてもいいや」という投資家も出てくる。
要するに、投資家は予想される配当分だけ先取りして株式を買う。別の表現をすれば、権利確定日の株価は、予想される配当金額だけ高くなっている。だから、権利確定日に株式を買い、1日だけ株主になって配当分だけ大儲けした気分になったとしても、実際は翌日、その予想配当金額分だけ株価が下落してしまう。
ということで、最初に書いた「配当取り戦略」は無意味である。誰もが知っている、すぐに分かる投資戦略なんて、無意味だとも言える。同じように配当取りを狙うにしても、もう少しひねった作戦が求められる。それがどんなのか、僕は知らないが。というか配当がそんなに重要だとは思っていない。

2021/11/24


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