川北英隆のブログ

為替レートに見る日本の基調

新年に入り、円ドルレートが円安に動いている。年末に1ドル150円超えもあったことからすれば円高方向に戻しているものの、140円を割るのではとの見方が年末に強かったことからすると、やはり円は弱い。
相場の短期的な値動きに一喜一憂すべきはない。これが基本である。とはいえ、新年の円安の動きには「不安」である。
何らかの評価が難しい出来事が生じた時、投資家はそれを「危険」だと感じ、安全地帯に逃げ込もうとする。この行動が日本で最大限に見られたのは、2011年3月の東日本大震災の時である。急速な円高化が進み、その年の10月31日には75円32銭の最高値を付けた。
背景には海外投資を引き上げ、その資金を円に変えようとの動きがあったと理解している。一般には、復興資金のためとか、損害保険金が入るとか、いろんな理由が唱えられたが、正しくないだろう。
今年の元旦早々、能登半島の地震があった。翌日、エアバスが衝突して燃え、灰燼と帰した。両方合わせても東日本大震災の被害規模に遠く及ばないものの、状況は同じである。しかし円高どころか円安になった。外国為替レートの動き単純化することはできないものの、2011年と2024年の反応には大きな差異がありそうだ。
背景にあるのは、日本経済や社会の劣化が意識されたのだろう。
地震は日本経済の大きなダメージをもたらす。財政的な支出も伴う。日本の体力が、それらに耐えられなくなっているのではとの懸念が生じうる。同時に、何回も書いたように、どこかで必ず大きな地震があると予期できるにもかかわらず、豊満違う放漫な財政を続け、将来に備えようとの意識が今の政府にないことも指摘できる。
航空機の事故を完全に避けることはできない。しかし、今回の事故は航空機同士の衝突というあってはならない事故である。世界的にも稀有である(1977年のカナリア諸島テフェネリ島での事例がある)。現時点において誰のかは特定されていないものの、人的なミスであるのは確かだろう。
事故の背景には社会の緩みがあろう。また、その緩みをカバーするシステムがなかった、機能しなかったという意味で、社会全体の劣化と見ることができるのかもしれない。
いずれにしても元旦以降の円安が、「崩れいく経済大国」の兆しでないことを祈るばかりである。

2024/01/04


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