川北英隆のブログ

公的年金は力の集中を

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が昨年10-12月期の資産運用の結果を公表した。株式市場が堅調だったことを受け、5.7兆円の運用収益を上げ、12月末の資産残高は224兆円になった。
めでたいことである。とはいえ、GPIF独自の工夫がどの程度あり、その結果が運用収益をどの程度向上させたのか。皮肉屋がいたのなら、「すべては市場環境が良かったからにすぎない」となる。
GPIFの資産運用について日経新聞の記者から質問されたので、いろいろと答えておいた。その1つが昨日の記事で紹介されている。簡潔に記事に引用されたコメントを要約しておくと、「競争力の高い企業をもっと応援すべき」となろう。その心は、「今の日本経済には力を分散させる余裕がない」。
GPIFをはじめとする現在の公的年金は4つの資産区分(アセットクラスと言う)、すなわち内外の株式、内外の債券の4つに25%ずつ投資することを基本としている。この資産配分は、日本経済に相当配慮したものだろう。本当のところ、債券はともかくも、株式において国内と海外の配分比率を半々とする理由に乏しく、海外の比率がもっと高くていい。
日本経済への配慮(日本経済を盛り上げ、国民の福祉を高めようとの意図)が公的年金の立ち位置からは正しいとしても、次の問題は、どの国内企業の株式に投資するのかである。
この点、GPIFの資金の多くは、国内企業2000社程度の株式時価総額の規模に応じ、比例配分されている。良い企業、悪い企業ともに(運用を委託しているアセットマネジメント会社を通じ)、経営上の意見交換をすることによって、日本企業全体の活力を底上げすることで、経済活力を増強しよう、株価水準を高めようとの投資戦略である。
しかしGPIFが見誤っている点がある。企業と実りある意見交換を行うのに必要な労力である。意見交換によって企業側に気づきを与えるためには、通り一遍の調査や分析では話にならない。たとえば、海外の同業他社、関連企業の動向を知った上でないと企業に対して納得感を与えられないし、ミスリードな情報になりかねない。
それならGPIFとしてアセットマネジメント会社に高いフィーを払い、大量のアナリストを雇用してもらい、企業との意見交換に望んでもらえばいいではないか。GPIF の224兆円の資産規模なら、高いフィーを払えるではないか。このような意見も出てこよう。
しかし、もう少し真剣に考えるべきだ。2000社もの企業と意見交換するため、アナリストを大量に投入する力が日本のあるのか、残されているのか。
人口が高齢化し、減少する中、日本としてやらなければならない課題が山積している。アナリストという間接的にしか経済活動に貢献しない分野に人材を優秀な大量投入していいのか。むしろ投資先企業を厳選し、そこに今のアナリストを集中投入し、日本のトップ企業として世界と渡り合えるようにする。これを先例とし、意欲ある企業に具体的な目標を与える。つまりグローバルな競争力を備えた企業が、それ以下の企業を引っ張り上げる戦略である。
日本全体が仲良く進歩しようとしても、世界は待ってくれない。小学年の低学年では「お手つないで一等賞」が通用しても、外は猛烈な競争の嵐である。国内でひ弱に育てられた企業は、一歩国外に出た瞬間に倒されてしまう。多くの日本企業が世界と比べて周回遅れなのは、GPIFが理想論を掲げ、優しすぎるからだと思えてならない。以上はGPIFだけの現象ではないのだか。

2024/02/04


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