川北英隆のブログ

空しい中央銀行ウォッチャー

日本では金融正常化の動きが始まり、欧米では金融引き締めからの脱却が模索されている。内外で政策の向きが逆ながら、日本の中央銀行である日銀やアメリカのFRB(The Federal Reserve Board)に注目が集まっており、中央銀行ウォッチャーの発信が活発化している。
新聞もそうだし、証券会社から届くニュースにも、日米欧の金融政策に関する情報のない日はない。証券市場系の会合に出席しても、その話題が色濃い。
そんな情報の洗礼に毎日晒されていると、当初は「そうなんや、中央銀行の発想の観点は少し違うな」と参考になるのだが、それが今日も明日もと続いてくると同じ趣旨の情報の繰り返しとなり、「アホらしい」と感じてくる。「そんなに毎日、同じネタを使って手を変え品を変え、情報と称して外部に発信できるな」、「これも能力の1つやろか」、「よう考えたら創作系の料理人もそうかも」と変に感心してしまう。
大学に身を置いて20年少し、大学人との意見交換で感じるのは、民間のエコノミストやアナリストの評価の低さである。民間に身を置いていると、理論に基づく論理展開が少ないから評価が高くならない。とはいえ、日本の大学人に乏しいのは、とくに経済系がそうなのだが、現実社会に対する認識である。だから、どちらもどちら、アメリカのように大学と民間企業の交流が深まらなければどうにもならないだろう。
それはともあれ、日本の民間エコノミストの、とくに日銀ウォッチャーのポストにある者達の最近の発信情報に対しては、「やっぱり、これじゃあ尊敬されへんな」というのが正直なところである。それが雇われエコノミストの宿命かもしれないが。
エコノミストとしての役割は、世界経済の中における日本を客観的に観察し、分析することに尽きる。それに基づき、証券市場の動き、中央銀行の行動を評価することだろう。これらにより、中長期的な経済および証券価格の流れや、短期的な流れの乱れ、すなわちノイズが浮かび上がってくる。この流れとノイズが、長期的な投資家はもちろん、短期的な投資家が行動する上でのヒントになる。
現在のエコノミストの情報は、多くは中央銀行の行動の予測に重点がある。明日、日銀がどう動く、明後日は・・という類である。日本銀行は絶対に正しいから、その日本銀行という神様が何を考えているのかを見破ろうとするわけだ。見破ることが真実の発見だとの発想でもある。
だから日銀幹部の発言の一字一句を正確に記録し、それを訓詁学よろしく解釈していく。発言が少しでも変化したら、大騒ぎする。日銀やその幹部も、そういう訓詁学的な動きがあることを十分認識しているから、一字一句に意味を込めている。
お互い、無駄なことに力を注いでいるものだと思う。「他にやることがないのかいな、暇やな」というのが最近の結論となる。

2024/04/11


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