川北英隆のブログ

生産性向上に抜本策あり

正しい物価上昇をもたらす抜本策があるのか、あるのとすれば何か。実は忘れ去られたというか、当然過ぎるものの、ひょっとしたら奇異と思われる策がある。しかもその策は多くの副次効果も生む。
何かといえば、通勤時間の短縮である。痛勤時間の短縮でもある。友人と話していて、この結論に至った。
痛勤時間を短縮するために何をすべきなのか。本社機能を都市の郊外へ、さらには地方へと移転することに尽きる。
世界国勢図会によると、日本の都市人口比率は他国と比べて非常に高い。もっとも何が都市人口なのかの定義は国によって違うらしい。もう少し地道に調べてみる必要がありそうなものの、様々な国を旅行した印象として、日本の東京圏集中への集中は群を抜いている。政治、経済の機能が集積し過ぎているのではないか。
東京圏集中の理由は簡単で、「お上のお達しを得られやすく、かつご威光の恩恵を受けやすい」立地だからである。簡潔に表現すれば、お上頼みが日本の文化であり、伝統であり、いまだに現状だと思う。
そういう意味で、日本の企業は明治の殖産興業時代以降、相も変わらず政府頼みであり、乳離れができていない。うがった表現を用いれば政府との癒着が続いている。
従業員からすれば、東京圏から距離を置き、さらには地方に住めば、通勤に要する時間が節約できる。痛勤ではないから身体の疲れが少なくてすむ。とすれば、「もう少し働ける」、「快適に働ける」となる。
厚労省は残業時間の制限に躍起である。「でもね」と思うのは、通勤時間をカウントしていない。「個人の勝手」というわけなのだろうが、勤務地が都市部の中心にあれば、買える住宅には資金的な制約があるから、「好きで郊外に住んでいるわけやないで」、「勤務先会社の責任もあるやろ」となる。
繰り返しになるが、企業が郊外へ、地方へと移れば、通勤時間が少なくなり、身体の疲れも少なくなる。通勤時間が少なくなる分だけ「追加で、副業でも何でも仕事ができる」。疲れが少ない分だけ「仕事の能率、つまり生産性が上がる」。
この2つの効果から、日本全体の生産力が上げる。生産力が上がるから、賃金を上げられる。需要が回復し、それによって物価が上がるという本来の姿になる。言い換えれば、賃金が物価に波及し、物価がさらに賃金を上げるという好循環が得られる。
もっと言えば、時間ができるから、子どもと過ごせる時間が増える。勤務先企業としても従業員の保育施設のために土地や建物を安く入手できる。つまり従業員に対して子どもを育てる環境を整えることができる。
働ける時間のアップ、生産性のアップ、子どもの養育と教育環境の充実、豊かな住環境、地方の創生と再生など、企業が東京圏を離れると「良いこと」がたくさん生まれる。インターネットが発達したから、企業と企業、企業と政府の情報の交換も簡単である。物理的に東京圏に集まる必要がない。
政府は何故、東京圏離脱の政策を打ち出さないのか。政府を慕う古い企業を慮っているのか。不思議である。

2024/11/29


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