川北英隆のブログ

日本のPBR改革は未だし

日経系のネット誌への寄稿原稿が掲載されたので、もうブログに上げていいだろうと、そのポイントを書いておく。上場企業のPBR(株価純資産倍率)の水準が上がっているものの、まだまだ不十分という分析である。
掲載誌は日経ヴェリタス、記事の表題は「いでよプロ経営者 失敗恐れず事業に資金を」である。
PBRが1倍より低いと、その企業の経営が株主の期待というか要求に応えられていないことになる。もう少し説明すると、株主の要求は資本コスト(事業でこれだけの利益率をあげてほしいとの数字)で表される。PBRが1倍より低いということは、「企業経営が要求された利益率に未達だ」と株主が思ったことなる。
日本の上場企業はPBR1倍未満が多い。これに業を煮やした東京証券取引所が23年3月、「資本コストや株価を意識した経営」を要請し、上場企業に発破をかけた。
これが契機となり、企業は増配やら自己株の取得やらに務め、それによって株価が上昇した。PBR1倍未満の企業の割合も小さくなった。
では、それで万々歳なのか。結論は、多くの日本企業はPBR問題に消極的対応を試みただけであり、積極的な対応になっていない。その証拠は、PBR2倍以上、3倍以上の企業の割合が少ないことにある。
アメリカの代表的な株価指数(500社で構成される株価指数)であるS&P500を見ると、PBR3倍以上が60%を超え、2倍以上だと75%に達する。日本の東証株価指数(TOPIX)では、3倍以上が14%、2倍以上が26%である(10月末現在)。彼我の差が大きすぎる。
PBR1倍とは「ようやく及第点、すなわち可」に達したということである。アメリカとの比較で、日本には2倍、3倍、それ以上という、「良、優、秀」の企業に乏しいことになる。
しかも、アップした図表からは、2倍以上、3倍位上の企業の割合が、足元では株式市場の活況もあって少し上昇しているものの、もう少し長い視点から眺めると「ジリ貧」のように見えてしまう。
要するに、不可にならないようには取り繕うが、さらに努力して秀レベルを目指す気概に乏しい。これでは個人の投資資金が海外企業に流れるのも当然だろう。

20251122TOPIX構成企業のPBR.jpg

2025/11/22


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