川北英隆のブログ

奈良の景色

26日、4月末なのに晴れたり時雨れたりの不安定な天気の中、奈良に行った。定期的に実家を訪問するためである。湿度が高く、雨で埃も少ないため、奈良盆地の山がよく見えた。
郡山の真東に城山がある。小学生の頃、父親に連れられて入った初めての山の一つである。すぐ後ろに少し高い山があるため、普段は城山がはっきりと見えることはないが、この日は、不安定な天気のおかげで城山の北側の鋭角的な斜面と頂上がよく見えた。そうそう、その北斜面に流れる谷沿いに白雲母の鉱山跡もあった。
景色に対する感覚は個人の体験によって異なる。初めて訪れる土地であるのなら、景色がそのまま、もしくは戸惑いや感動そのものを伴って飛び込んでくる。過去に生活し、現在は離れている土地なら、景色は過去の体験とともに飛び込んでくる。過去と現在との間の変化が大きな戸惑いを生じさせる。現在住んでいる土地なら、日々に景色の変化に気づかないから、注意深くないかぎり印象に残る部分が少ない。
この日、奈良の景気でもう一つ記憶に残ったのが、近鉄の新しい電車である。阪神電鉄との直通電車が走るようになったので、神戸方面から来るのだろう。近鉄の、高校時代から走り始めたあずき色の電車も混じっているから。
かつて神戸は遠い都市であった。神戸市内には社会人になるまで行ったことがなかった。この直通電車も、過去と現在の変化が生み出す戸惑いである。

2009/04/26


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