川北英隆のブログ

ライフネット生命保険・出口治明社長

戦前、といっても第二次世界大戦前、日本には大きな自由と夢があった。銀行も保険会社も自由に作れた。戦後、その自由が失われた。その代りに秩序が生まれた。しかし、その秩序には何の意味があったのか。
ライフネット・出口治明社長の『直球勝負の会社』(ダイヤモンド社)はこの4月に発刊されたばかりである。それによれば、74年ぶりに、独立系の生命保険会社としてライフネット生命保険が設立された。本来、誰もが自由に起業できて当然であり、そのことで新しい風が業界に注ぎ込まれる。残念ながら、銀行、生命保険という金融業界において、日本には起業の自由が乏しい。溌剌といた企業と業界の文化がない。
もちろん、そのことがあるから、出鱈目な経営を許さない。だから、誰もが安心して預金でき、生命保険に加入できる。ただし、その社会的な環境を作り出すために高い代償が求められている。業界が過保護に陥り、サービスが低下し、安い預金金利を強いられ、高い手数料や保険料を払わされているのかもしれない。どの世界にもタダ飯(フリーランチ)はないことを確認すべきである。
実は、出口社長も私も出自は日本生命保険であり、関西の三重と奈良であり、京都大学であり、直接の上下関係はなかったものの、大雑把に言って同じような仕事をしてきた。
『直球勝負の会社』にもあるように、出口社長は日本生命から多くのことを学んでいる。私も同じであり、多くのチャンスを与えられたと思っている。だから、日本生命には多大な恩義を感じており、生命保険業界の発展はもとより、その業界の雄としての日本生命の発展を望んでいる。出口社長が日本生命を辞めてまで、ライフネットという新しいスタイルの生命保険会社を起業した本意も、生命保険業界にもう一度、溌剌とした文化を取り戻したいと思ったからである。
『直球勝負の会社』を読んだ感想として、今日は次のことを書いておきたい。起業し、それが成功するには5つのポイントが必要だということである。蛇足ながら、この5つのポイントは起業に限らないことを付け加えておく。
第一に、燃える心と頭脳である。とことん興味を抱けるテーマを見つけられるかどうかである。いつも学生に言っていることだが、人間の才能には大差ない。生まれて何十年か経過して差が生まれるのは、燃えるかどうかにかかっている。何が燃えるきっかけかはわからない。ただし、火種が必要で、それが両親の教えであり、学校での教育かもしれない。
第二と第三と第四は、知識、論理的な思考能力、行動力である。努力と言い換えることもできるだろう。燃えたテーマに対して自分自身の時間や資金を集中し、それによって得られた結果を整理し、頭の中で組み立てなおし、それらを世の中に問うプロセスである。燃える心と頭脳があれば、このプロセスを納得できるまで追求できるだろう。
第五は幸運である。しかし、幸運は、情熱と努力があればこそ生まれるし、見つけることができる。この意味で、起業に関して最後に指摘すべきポイントだろう。
出口社長の『直球勝負の会社』は、以上の5つのポイントを具体的かつ明快に示してくれている。

2009/04/09


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