川北英隆のブログ

経済物理学研究会

京都大学の湯川記念館で経済物理学研究会があった。そのパネルに出ろということになって、今日、出席した。
経済関係の出席者は少数だった一方、物理関係がほとんどだった。だから、というのも変だが、議論は新鮮だった。計数処理のテクニックに関しても、経済側からして学ぶところが多いと思った。多分、この研究会が東京で開催されたのなら、経済関係者の出席も多く、さらに活発になったと思う。
議論の一つを紹介しておくと、バブルの定義(証券市場全体のバブル)に関しての質問があった。水が摂氏零度で氷になるように、バブルの定義は明確であるべきであり、具体的な定義は何かという質問である。東大の吉川洋さんが何回も同じ発言をされていた。資産価格が急速に上がるだけではバブルではないのだという主張である。ファンダメンタルズから乖離してはじめて、バブルだということでもある。
しかし、ファンダメンタルズから乖離することだと定義するだけでは、では、そのファンダメンタルズに基づく資産価格とは何なのかが次の問題となる。ファンダメンタルズに基づく資産価格は一義的に決定しない。前提によってファンダメンタルズに基づく資産価格に幅があるからである。
まあ、バブルを定義するのであれば、市場コンセンサスに基づき、将来キャッシュフロー、そのボラティリティ、割引率の数値を、幅を持たせて(シナリオ的に)想定したうえで、その結果としての理論株価を推定することから始めなければならない。この理論価格も、一定の幅(範囲)を有したものになるだろう。このようにして設定した理論株価の範囲を基準として、たとえその範囲から何割(もしくは何σ)か、日常的に価格が変動する範囲内で現実の株価が乖離しているとしても、そもそも理論株価の決め方が大雑把だから、バブルとはいえない。さらに「その、日常的に乖離しうる範囲」から外れていてはじめて、株価がバブルとしての必要条件を満たしていると定義できる。
このように、バブルの定義からして曖昧だから、議論が進展しないのだろう。

2009/09/09


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