川北英隆のブログ

郵政民営化の是非

賀来さんといろいろ話をしたが、その時に思い出したのが郵政民営化である。自民党が小泉内閣の主導で推進した民営化は、既得権益の維持でしかない。
賀来さんは自民党の民営化に批判的だった。この意見に賛成だったから、議論が展開した。
そもそも、郵便貯金と簡易保険の社会的な役割が理解できない。銀行や生命保険の機能はすでに十分に発達している。これらの機能の補完を社会的に意図し、郵便貯金や簡易保険を存続させる意味はほとんどない。
では、郵便はどうなのかといえば、こちらも同じである。ネコや飛脚が対抗勢力として発展してきている。たとえれば、日本航空と全日空の関係のようなものである。航空業界は全世界的に苦しい状況にあるが、それでも全日空が何とか持ちこたえているのに対し、日本航空は失速している。かつて日本航空は日本の代表であり、代表にふさわしい多くの特典が与えられていたにもかかわらず、である。このブログにも、クロネコとの比較で郵便の批判を何回かした。現在、同じ土俵に立ってハンディーなしで勝負をすれば圧倒的にクロネコの勝ちだろう。ゆうパックがペリカンと一緒になっても、体質が兄弟だから状況に変化しないだろう。
もう一つ考えなければならないのは、では郵政にはまったく意味がないのかどうかである。都市に住んでいて忘れがちなのは地方の事情である。都市部を離れ、山間地になれば、郵政の役割は大きい。経済原則だけでは過疎地域の銀行サービスや郵便サービスは成り立たない。
「だから郵政を存続させなければならない」との主張になるのだが、この議論には飛躍がある。都市部には存続を続ける郵政があり、既存の銀行や保険会社もあり、社会的に機能が重複している。民間の銀行や保険会社だけでも過剰であるのに、これに郵政が加わればますます無駄である。
結論は、過疎地域の銀行サービスや郵便サービスを残す一方、都市部の店舗や機能を売却することが望ましい。過疎地域のサービスは経済原則だけでは成立しないから、財政的に補助すべきであり、国営でいい。国営のための費用の一部は、都市部の店舗や機能の売却代金で賄うことである。それで足りなければ、国民が負担すべきである。いずれにせよ、目には見えないが、現在の民営化においても、何らかの形で国民が過疎地域でのサービス維持のための費用を負担しているのだから。この議論については、拙著『財政ビッグバン』(東洋経済社、1997)を参照してもらえればと思う。

2009/09/25


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