川北英隆のブログ

ビルマの数珠

義兄が急死したので東京から急遽戻り、葬儀に出席した。お経の間、今使っている数珠を見ていた。緑っぽい、不揃いな石の数珠である。10年前にビルマで購入した。
今回、リンジャニ山に登って予想外だったのは、真夜中、海岸線や登山口の村にずらっと灯りがともっていて明るいことだった。最後の急登で悪戦苦闘しているとき、東の空が明るくなってきたのかと思ったら、それは海岸線に沿った村の灯りであり、本当の白み始めた空は90度くらい違ったところに広がっていた。その時にも、ビルマのことが思い出された。
ビルマには父親に付き合って行った。最後のビルマ訪問だと思ったのだろう、同じ部隊で戦死した慰霊を祀ってもらっている尼寺を訪問した。そこからマンダレーのホテルに戻るとき、すっかり日が暮れた。道路横に続く村には電灯がほとんどなく、ロウソクの灯りに夕食する人達の顔があった。
ロンボク島もそれに近いと思っていたから、山から見る真夜中の村に灯りに驚いたのである。もう少し言えば、デンパサールでもロンボク島でも、ホテルで停電を経験したから、ビルマと同じだとの先入観が余計強かった。
多分、今のビルマは10年前と変化ないだろう。頑なな軍事政権の下でますます酷くなっている可能性もある。ビルマには豊富な水と鉱物資源があるから、本来なら豊かになっていて当然の国である。しかし現在、隣国のタイと比べて大差がついてしまった。
今後も葬儀で数珠を取り出す度、ビルマを思い出すのだろう。ビルマは、できればもう一度訪問したい国なのだが、行って安全なのだろうかと心配になる。だからこの10年間、訪問できないでいる。

2009/09/26


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