川北英隆のブログ

国債大量発行の影響2

昨日の続きとして、せっかく7-9月期のGDP統計が公表されたのだから、それに基づいた分析をしておこう。
昨日は国際収支統計に基づいて、輸出入の差額である貿易収支の黒字がゼロすれすれまで低下しており、もう少しで赤字になりそうなことを述べた。同じことを名目GDPで見ればどうなるのか。その前に、国際収支統計は貿易の金額そのものであること、GDPは付加価値(すなわち賃金と企業利益を含めたもの)であることを確認しておきたい。GDP言い換えれば国内総生産とは、日本国全体が稼ぎ出している「利益額」なのである。
このGDP統計で「輸出-輸入」の額を見ると、昨年7-9月期から今年1-3月期までマイナスが続き、4-6月期にはプラスに戻ったものの、7-9月期は再びマイナスになっている。赤字なわけだ。
言い換えれば、国としての利益が海外に流出している。新たに生み出された国としての利益で国内の需要(消費や投資)をまかないきれないことになる。別の角度から見れば、海外からの利益の補填が必要な状態に陥っている。大げさに言えば、海外が日本を見捨てないような努力が必要なわけだ。幸い、まだ赤字額は小さい。さらに、海外には今まで日本が蓄積してきた巨額の投資もあるから、それを取り崩せばいい。こう考えると、赤字といえども、まだ大したことがないのかもしれない。
もっとも、過去、GDP統計で「輸出-輸入」がマイナスになっていたのはいつ頃かと探せば、1980年にまで戻らなければならない。第二次石油危機の頃である。やはり時代は30年前に戻ったことになる。

2009/11/16


トップへ戻る